これでこそ森見登美彦。
前回読んだ「ペンギン・ハイウェイ」が今一つだったので(刊行はこっちが先らしいが)
今作がわたしの期待する森見登美彦の世界で嬉しい。
このヒト本当に平行世界が好きだなあ。
6篇の連作短編集。いや、中編か?
最初の話がひねりのないマジメなファンタジーだったので少し腰が引けたのだが、
2番目と3番目が森見登美彦らしい、ユーモラスな、イメージの膨張。これこれ、と思って嬉しくなった。
そしたらその後はマジメなファンタジーに着地したので、おやおやと思った。
でも2と3を読んだ後だから、それもまた良し、と受け入れられた。
多分、間に狂言パートがなかったらちょっと不満だったろうな。
わたしがまず一番に森見登美彦に求めるのはユーモアだからして。
そういう意味では今回の構成は大成功だったと思う。
この人の書くものはほんとに色彩が豊かですよねえ。
今回は特に。万華鏡というタイトルがこの話にはぴったりだね。
やっぱりタイトルはこういう風に内容を表してくれると嬉しい(よ、恩田陸!)。
絢爛たる祭りの夜が――多分実際よりも絢爛豪華に――繰り広げられる。
表紙の色もきれい。祭りの夜の高ぶる気持ちを思い出させる。
森見登美彦の作品は寂しいノスタルジーと混沌のエネルギーと色彩とユーモアで出来ている。
ゆえに祭りの夜の話といったものはぴったりだと思う。
目下わたしはこの人が作家として一押しかもな~。まあわたしの眼力はそこまで大したもんじゃないけど。
シリアス系とガッツリ系と恋愛系という王道を眼中に入れてないという時点で、
そもそも好みがすごく偏ってるし。
![]() 【楽天ブックスならいつでも送料無料】宵山万華鏡 [ 森見登美彦 ] |
森見登美彦にはがんばってほしいのである。もうちっとばかり発表ペースを上げてくれると嬉しいがなあ。
コメント