歴史物だと思って読んだのだが……
それがゆえにフキの設定がどうしても乗り越えられなかった。
トンデモな設定の話だと最初から知っていたらまた気分が違ったのかもしれない。
事前情報は不要なこともあるけど、知っておいた方がいいこともありますね。
身代わりを、なぜそんな無理な設定にしたのかをすごい訊きたい。
まだ、フキが乳母子だとか女童だとかいうなら話に乗れたと思う。
少なくとも公家の生活をよくわかってる人物じゃないと絶対無理な話だよねえ。
それなのに何故、捨て児の下女を持って来る?
字さえ読めない人に宮様の代わりは絶対無理。そんなことはアホでもわかるだろうに、
なんで有吉佐和子はそんな設定にするんだろう。身代わりだったということを書きたいのなら、
それはそれでいいと思うが、フィクションなんだからもう少し無難な設定になぜしない。
読み書きくらいは出来る設定にしても良かったでしょう。
身代わりにすると決めてからだって、だいぶ時間はあったんだから、
せめて字を教える努力くらい出来たのに、ほぼそういう類の教育はしてないんだよ!
出立間際になって「かず」だけ教えるなんて、不自然すぎ。
つらつら読ませる、その文章は達者なんですよ。さすがに。
だが立ち止まって考えると、話のバランスがなあ。
バランスというより、また「ふるあめりかに袖はぬらさじ」と同じように、
タイトルでミスリードされてしまったか。
和宮降嫁についてのがっつりとした歴史物を期待していたので、
読みたかったのは政治状況や幕府側の客観的な状況も含めた王道な話だったんだよな。
500ページの文庫本の362ページにようやく京都出立。それまでは入れ替わりの話、行くの行かないので
揉めている停滞状況、御付きとして行きたくない人々の胸中、関係者間の(歴史的にみれば)ちっちゃいかけひき、
みんな“内輪の話”なんだもの。
……歴史小説は他の人が書けばいいということかもしれんが、
たとえば「ロミオとジュリエット」で、乳母がジュリエットを育てた苦労話が延々続いたとしたら、
いや、読みたいのはそこじゃなくてロミオとジュリエットの恋愛のゆくたて。と言いたくなる。
入れ替わりも相当無理くりですしね。一度目にしても二度目にしても。
その設定が受け入れられないので、その他の考証に対しても疑惑を持つ。
御所言葉とか、あれは相当アホっぽく響くように書いてありますが、考証的に大丈夫なんですかね?
それとも信じない方が安全なんだろうか。信じないようにしようと思っても、
ソースを忘れても読んだことはある程度残るから適当に書かれると困るのだが。
そして関東御下りをあんなに嫌がった和宮が、群馬県の寺に隠れ住んだという設定にも大変疑問を感じる。
京都を離れて暮らすという決断は無理だとわたしは思うし、
しかもよりにもよって江戸のすぐそばの群馬とは。どっちにしろあずまえびすの国じゃないですか。
まだ近江、せめて熊野とかに設定すれば多少は納得出来たかも。
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