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< リキッド 鬼の酒 奇跡の蔵 >(ドラマ視聴)

50分×3回のドラマ。これが是か非か……。難しいところ。

人間ドラマの部分は、かなりあっさり。薄いと不満を持つまでではなく、そもそもあっさり。
代ってこってり描かれているのは酒造りの現場。
わたしはわりと酒造りに興味があり、テレビの特集とかはけっこう見ているので、
系統的に覚えてないまでも断片的な知識はある。

が、実際巨大な甑とか、打って変わって最新の精米機とか(その値段とか)、
水の切り方、洗い方、そこまで見せてくれる番組はそうそうなかった。
通常のドキュメンタリーでは麹のふりかけ程度かね、一番コマイ作業としては。
このドラマで、手作業での温度管理(大きな湯たんぽ様のタンクを一晩中?ゆっくりと樽の中で人力で動かす)を
初めて見た。

50分×3回が是か非かというのはここのところで……
酒造りを丁寧に見せてくれるのはいいけど、ドラマとしての話としてはもっともっともっと、
いくらでも膨らませられた設定だろうなと思う。
ポイントを絞って、単焦点のドラマにしたのが成功なのか、どうなのか。
せっかく役者を揃えて酒蔵セットも揃えて撮るのなら、全10回とかも容易に出来たはず。

でも全3回で、面白かったといえば面白かったんだよね。だからいいのか。成功なのか。
話のあっさりさに物足りなさは感じても、このドラマは何しろ空気感が良かった。
わたしは間の長い邦画が苦手なタイプなんだけど、これはいい感じの間だったと思う。

話はもうダメだしをしようと思えばそれはそれは……
渡辺いっけい演じるところの敵役、大手の酒蔵も、なんで出して来たのかわからない程度の希薄な存在感、
同じく裏切る杜氏も別に要らないよなあ、と見えたし、
離婚寸前の(キャリア志向っぽい)妻が一転、東京での勤めをあっさり辞めて金沢で同居決定とか、
杜氏が死んだら、翌年の酒造りは誰がやるのか。一年で酒造りが出来るようにならへんやろ。
借金どないして返すねん。

まあでも話には目をつぶりますか。画柄と空気感で満足させてくれた。

伊藤英明は多分「陰陽師」の1と2でしか見たことはないかもしれない……
わたしは「陰陽師 1」はB級としてとても好きだったんだが、2はB級として超駄作認定。
まあどっちにしても伊藤英明の演技は……大根でしたでしょう。2は萬斎さんも微妙だったけどな。
その頃と比べたら格段に、と思った。

だが、実際このドラマの主役は、柄本佑ではなかろうか。
わたしはこの兄弟、実は区別がついていないのだが、ゲゲゲの女房に出てた方の人ですよね。
いいですねえ。実直に繊細にもどかしく。いい役者。
父と同じく、この人も一癖ある役柄しか出来ないと思うけど、スタンダードな役柄をこなす凡百の役者は数多いる。
ぜひ大成して欲しい。……すでに大成しているのかもしれないが、何しろ出演作品がわたしの視野に入ってこない。

個人的に嬉しかったのは深水元基が出てたこと。
こないだ見た「インディゴの夜」の出演俳優であるがゆえに応援している。
「オリエント急行殺人事件」にも出てたらしい。わたしは気付かなかったが……
清水ってあれかね?剛力家の使用人だった奴かね?
ちょこちょこあちこちに出てるんだなー。嬉しいね。

タイトルの「リキッド」はちょっとなあ。もう少し考えたらんかい。
音楽はクラシックを多用しなかなか良かった。時々入る琵琶(?三味線?)のジャン!という音が良かった。
あれは「蔵」でも使ってましたかね。

放送が終わってもWikiに項目すら立たない(!)地味なドラマだったが、
わたしは好きでした。こういうミニマムなドラマももっとあってもいいかもしれない。
物足りない部分はあれども、少なくともテーマに対する作り手の愛着は感じられた。
大事ですよね。そこは。

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