NHKの美術番組。録画して、しばらくして全く期待しないで見たところ、
――突然野村萬斎さんが映ってテンションが上がった!
ナビゲーターが萬斎さんだったんですねー。まあナビゲーターだから、トータルでほんの2、3分しか映らないのだが。
NHKはナビゲーターで釣るやり方を止めて欲しい。「世界遺産 時を刻む」なんてのも向井理で釣ってるでしょ。
(そしてウカウカとそれにのせられるわたし……)
まあ、それはそれとして今回のテーマは「截金」でした。
NHKの美術番組には折にふれて啓蒙されているのだが、10年くらい前かなあ、もっと前かなあ、
截金の江里佐代子の番組を見た時には衝撃を受けた。
それまで截金なんて言葉も知らず、ということはどんなものかも知らず、截金ってなんですかね?という状態で
番組を見たから。もうその超絶技巧に……開いた口がふさがらない。
江里佐代子の作品を実際見たのは、その数年後の大英博物館のエキシビ。
この方は若くして亡くなって(このエキシビの年に亡くなったらしい)、
そして今は娘さんが截金の道に進んでいるそうですね。
娘さんは左座朋子。この人も数年前にテレビ番組で見た。この人も達者だと思った。
今回截金師として番組に出てたのは並木秀俊なる人。
この人も達者だと思った。……そもそも截金ってのは金箔をミニマム0.1ミリの細さに切って、
それを貼りつけていく作業だから、もう0.1ミリが切れるというだけで
(その0.1ミリを切るための竹刀←ちくとうと読むらしい。を削れるだけで)達人な感じですよ。
それを貼るからね!しかも幾何学模様をね!ちょっとでもずれたら素人にも大変わかりやすいからね!
実際、寄って映すとちょこちょこと線がずれているところはあった。
多分江里佐代子にはこういうところがなかった。
しかしそもそもが大変高いレベルに挑戦しているデザインなので、1箇所か2箇所はずれがあった方が
ああ、人間なんだなあ、という安心感もある。
彼が復元模写をしていたのが……やばい、なんだったか忘れた。
多分「虚空蔵菩薩像」ですね。細部の模様からすると
呆れることに、金線だけじゃ飽き足らず、当時銀線も使っていたらしいの!あ、違う、銀線じゃなくて。
通常3枚の極薄金箔を合わせて作る線を、さらに最極薄の箔を使って、間に銀箔を挟むんだって。
そうすると金3枚とは微妙に色が違い、そのニュアンスを愉しめるとか。
しかしそのニュアンスを愉しむといってもさー。
菩薩が下に伸ばした右手、その手首周りの背景のつる性植物文様にその銀混じり線は使われているのだが、
葉っぱの輪郭は金線で取り、茎の部分は銀混じり線で取るという細かさ。ごくごく微妙な色使い。
ええやん、そこまでせんでも!
……なんかいろいろと触れたい点はあったんだけど、ちょっと時間が経って内容を忘れてしまった。
特に記しておきたい点は、京繍のこと。
京繍。きょうぬい、と読むそうです。
截金技法の効果を説明するのに、わざわざ京繍で再現しなくても良いというか、
どれだけ金をかけてるんだNHKは、という感じですが、
――この京繍の糸の色の美しさ、それで作った振袖の美しさに目を奪われた。
あまりにも美しくて、気づくと歯ぎしりをしていた。
相変わらずNHKはネット上の情報がサッパリ役に立たず、この京繍の作家の名前がわからない。
こうなることはわかっていたから、名前を覚えようと思っていたはずなのに。
……あー。うー。艸。長艸。あ、多分この人だな。長艸敏明。http://www.nagakusa.jp/koubou.html
せっかくホームページを作るのなら、出来れば太っ腹にどーんと作品を展示していて欲しいけれども。
テレビで映ってたのは紅葉の振袖。これが色使いが派手で、黒地に赤や黄色、――それだけではなく
緑や紫色や数多くの鮮やかな色を使い倒して、頭で考えると趣味が悪いのではないかと思うほどなのだけれども。
画面で見るとすごくきれいだった。実見したいと思った。
京都に行った時はギャラリーに行ってみよう。販売系のギャラリーで入場料1000円は高いが、抹茶お菓子付き。
うーん、しかし一日体験でも2万円ですか。すごいな。
わたしの不器用さで2万円もかける価値のあるものが出来るとは思えないので二の足を踏むが。
他を見ると、5000円程度で一日体験が出来るところもあるらしい。
そうですね、それから奈良の浄瑠璃寺が映っていた。わたしが行く時もこのくらい人少なめであって欲しいものだが。
番組には夢枕獏が出ていた。
わたしはこの人、作品には感心せず、コメンテーターとしてはちょっと好き、という微妙な感じの人。
しかし今回この人の「末世の不安を究極の美で鎮めようとしたのではないか」という意見には、
目下のわたしはとても賛同する。
もっと書き留めておきたいことがあったはずなんだがなー。
どうも雑駁。いかんな。
最初に萬斎さんでミーハーに騒ぐから、注意力が散漫になってしまったのだ。
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ちなみにこないだの「プロフェッショナル 仕事の流儀」で萬斎さんが出ていた。
基本的に地上波の番組は見ないので気付くのに遅れ、かろうじて間に合って22:10くらいから見た。
なんかしみじみ――惚れ直しましたわ。
なんですかね?何がかっこいいんですかね?
まあ姿勢は当然いいですよね。容貌はそこまで美形では……雰囲気はすっきりしてかっこいいが。
性格もそこまでいい人かどうか……。面白い、興味深いキャラクターだとは思うけど、
現実的にはむしろ自分のことで手いっぱいで、一人で突進していき、
旦那にしたら大変な人(というか職業)な気がする。
なんですかね。闘う男だからかな。伝統と闘い、父と闘い、自分と闘う。
まあ人間の大多数は誰かや何かと闘っているものだと思うけど、萬斎さんの場合は相手にとって不足なし。
とどのつまり、600年の伝統と闘っている。それが大きく見えるのかな。それがかっこいいのかな。
1日、2メートルほど手前から一挙手一投足をじーっと見ていたいね。
そうすれば魅力の一端が言葉に出来るようになるかもしれない。
いや、好きな物を言葉にすることにはあまり意味はないか。
だが、好きな物が好きなだけでは何となく落ち着かない性分なんだよね。
なぜか、を知りたい。
ところで息子。大変だろうががんばるんだよ。ヘタレなわたしは痛ましくて痛ましくて仕方ないのだが、
教える時の萬斎さん、おっかなすぎるもの。
がんばった先に何かいいことが確実に待っている……かどうかがはっきり言えないところがつらいところだ。
わたしは……無理だなあ。ヘタレすぎる。
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