完敗。
……こういう映画だとは、思いませんでしたよ、わたしは。
普通の、おそらくは普通すぎる、心温まる良い話で。
そのシンプルなストーリーを大泉洋の味付けでわずかにスパイスを効かせるんだろうと。
そしたらね。――間が長く、動きが少なく、話が少なく。これはとても苦手な部類。
画柄は大変良かったのだが。
北海道の風景は大変美しかったのだが。
しかしそれが仇となって、ここはどこなの?日本なの?それともファンタジー世界?
と、そこからもう戸惑ってる。それでは落ち着いて話に入って行けないんだよね。
わたしはちゃんと説明された映画でないと受け付けないのだが、
この映画は状況がわかってくるのって、始まってから相当経ってからでしょう。
そもそも最初のシーンから、斧を持って大泉洋が出てくると、
(斧という道具が現代日本で身近な道具ではない以上)
あの木を斬り倒そうとしているとまず想像し、次に誰かを殺して来たところなのかと思い、
振り上げて、刃先が自分を向いているから自殺しようとしているのか?と考えるが、
自殺にしては方法があまりにも斬新なので、結局なんなの?とわからないまま。
服もボロボロなのは、どこか遠くから旅をしてきた人なのか?でもこれけっこうフォーマルな服だよね?
とか、最初から疑問点が山のように。
そういう疑問が解消されないまま話が進む。
かろうじてはっきりするのは、二人が兄弟だということ、兄がワインを作り、弟が小麦を作っていること。
そこに“謎の女”として安藤裕子が登場し、……そもそも話自体に疑問点がいっぱいなのに、
謎の女ですから、二重にわけがわからない。
……ダウジングですから、彼女は水を掘り当てようとしているってことでいいんですよね?
アンモナイトってダウジングで見つかるもんじゃないですしね?
でもあの話の描き方だと、どう見てもアンモナイトを探しているようにしか見えないと思うんですが。
そもそも、ダウジングをしているのかどうかもあまりにも遠景からなのでわかりにくいし。
うわ、三重の意味でわけがわからない。
なんなの?なんなの?なんなの?とずっと答えが出ずに、
そういう状態で話を見ているのはとてもツライ。
ファンタジーならファンタジーでいいんだけど、というより、むしろファンタジーとして作った方が
絶対良かったと思うんだけど、それにしてもファンタジーなりのリアリティってあるからねえ。
別に、話がわかるように丁寧に順番に描いていけば、普通にまあいい映画になったと思うのに、
なんでこんな説明不足の映画にしちゃったんでしょうね?
気になるところは色々ありました。一番気になるところは、大泉洋の家でお風呂を貸してもらえるようになるまで、
安藤裕子はお風呂をどうしてたんだろう?洗濯は?ってところ。そこかい。
大泉洋と安藤裕子が恋仲になるのも解せなかったし、
――ここが解せないのでは話としてダメだと思うんですけど。
お母さんから手紙を貰う時、安藤裕子がいるのは日本ですよね?アパート名漢字で書いてあったし。
でも手紙の文面は、「帰国したら一緒に住めるように部屋を用意して“おきます”」って、
むしろ外国にいる娘に日本にいるお母さんが書くような言い方だよね?
エアメール、娘の名前はカタカナで、住所はアルファベットで、差出人はアルファベットで、
差出人は名前も住所もアルファベット。日本にいる娘に出すなら、娘の住所は普通JAPAN以外は漢字だよね?謎。
お母さんは何をしている人なの?金持ちはわかった。あの場所は何?教会っぽいけど、
フェンスが安っぽすぎ。内部装飾は高価そうだけど、母の衣服からして自宅とは思えない。
だからといってオフィスにも見えない。
それっぽいってだけで、それっぽいロケ地を選んだだけじゃないですか?
これを言っちゃあいけないんだろうが、楽隊の衣装、可愛かったけど、いつどこで作り材料はどうした?と
考えると無理がありまくりですよ。
……なんかもうツッコミたいところがいろいろありすぎて疲れる。
全く警戒なしに見に行ったので、まさに足元をすくわれた感じ。久々に大外れ。
大泉洋は、全編シリアスならば、大泉洋じゃなくてもいい気がする……。
「探偵はBARにいる」のように、彼にしか出来ないような役柄というわけではなかったのが残念。
染谷将太は今回顔と名前が初めて一致した。一致して嬉しい。なんか気になる役者だったから。今後期待。
田口トモロヲは好きだが、あの制服もおまわりさんとしての行動もファンタジーにもほどがある。
きたろうは面白かった。最後、すっかり騙されて、「そっちかい!」ってちょっと笑えた。
まあ風景の良さと、犬がかわええ、という映画でしたよ。残念。
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