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◇ 宮脇俊三「汽車旅12ヵ月」

1年ほど前から、宮脇俊三の本はちびりちびりと読んでいる。
全体的に地味なことこの上ないけど、実はユーモアが満載で、地下鉄で一人でにやにやしている。

だいたいアベレージの面白さなので、1冊1冊感想を述べて行こうとは思わないのだが、
この本に関しては記録しておきたいことが。引用する。

   「車掌、頭に来ました。これだからイヤになっちゃうんです」
    と、ひどく生ま生ましい口調で、車掌が言った。週刊誌に眼をやりながら解説を聞き流していた
   乗客たちも、思わず顔をあげて車掌を見た。大柄な中年の車掌であった。
   「東京駅を発車するまえに、車掌は幾度も繰り返し車内放送でご案内いたしました。
   この列車はひかり号でこざいます、こだま号ではこざいません、ひかり号は東京を発車いたしますと
   名古屋まで停車いたしません、お乗りまちがいのないようにと、それこそうるさいほど繰り返し
   申し上げました。……それなのに、やっぱり出ちゃうんですねえ。熱海までいらっしゃる三人連れの
   ご婦人のお客さまが乗っちゃってるんですよ。そして、熱海で停めろって騒いでらっしゃるんです。
   あれほど幾度も、この列車はひかり号です、名古屋まで停まりませんって放送したのに
   聞こえなかったのですかと言いましたら、おしゃべりに夢中で聞こえなかった、っておっしゃるんです。
   車掌、もうつくづくどうしていいかわかりません」

宮脇さんの鉄道旅行中に起きた出来事。
突然、車掌が車両の中で喋りだし、定期列車は満員だが臨時電車は空いているので、
今後とも出来るだけ臨時電車の利用をお願いします、と案内した後のこと。

……どんな仕事にも苦労は付きものだとはいえ、車掌さんもご苦労さまですな。
と、同時に、今の時代にこんなことをしたら相当マズイことになりそうな気がしないこともない。
車掌さんの行動への賛否両論、あるいは三人連れのご婦人への非難。
ある程度以上の騒ぎになれば、JRなんかのお役所体質では、少なくとも蟻の一穴をふさぐ方向に
無益な努力を傾けるだろうし。
こういうことが出来た、のどかな時代だったってことですよ。

実際に遭遇したことは記憶にないけれども。
たまに見かける、   

これとか

これとか

これとか。

こういう類のを読むと吹き出す。まあなかなかブラックなものもあり。程度問題だと思うが。

本の感想ではありませんでしたな。

汽車旅12ヵ月 (新潮文庫)
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