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◆ 竹久夢二と大正期の美術工芸

心身に余裕が出てきたので、宮城県美術館でやっている超マイナーなエキシビに行って来ました。

常設展300円のお値段で見られるらしい。
もしかして使えるか?と思い、3月に行ったミュシャ展のチケットの半券を探しだし、
それを持っていって「これで見られますかね?」と聞いたら、大丈夫だった。
その時は特別展だけ見て、常設展は見なかったから。常設展は見たり見なかったり半々。
そんなにわたしの好きなものもないし。……と思ったら、こないだの川端龍子なんか
いつの間にかこっそり(?)展示しているんだから油断できない。

常設展の入場料で、ということは全部宮城県美術館所蔵品なんだろうなあ。
へー、竹久夢二、結構持ってるんだねえ。初めて知った。

一応、客寄せとして竹久夢二は付いているけれど、物としてはそんなに良くはない。
竹久夢二、わたしはどっちかというと好きなんだけど、彼は出来に大層幅がある。
適当に描いても売れるからって、適当な出来のものが多すぎる。
ちゃんと描いたものはけっこういいのになあ。

今回の竹久夢二のラインナップはほぼ適当クラス。
大方が軸だったんだけど、だいたい描き流しな感じでしたねえ。
彼はその抒情性が好まれてはいるんだろうけど、線自体が抒情的過ぎますよ。
全然極まってない。売らんかなの作品だろう。数を描きすぎだよね。
むしろ商業デザインの方が少なくともある基準は満たしていて、ちゃんとして見える。

しかしその中で、「トンボ取り」という軸はけっこう良かったな。
画題が6、7歳の少年で、墨一色だったかな?それほど細かくは描いてないが、
線も抑制されており、極まっている。これは、わたしは竹久夢二だとはわからないなあ。
夢二っぽくない(夢二にしては)実直な絵。軸装も絣で少し変わってる。その絣は絵の中の少年の着物だと見た。

多色木版画の「文楽人形」とか「治兵衛」「治兵衛のマスク」なんかは良かった。
やはり色彩センスはいい人だろう。べったりした色使いが新鮮。
……治兵衛2作品の出来が良かったので、彼は自分と引き比べて身につまされたのかね?と思っていた。
共感出来たのかもしれないさね。ちなみに治兵衛は紙屋治兵衛のこと。

数としては大正期の油絵の小品も多かった。
岸田劉生とか萬鉄五郎とかもちらほらあるけど、わたしはこの辺りは特に興味なし。

日本画だけれど、尾竹竹坡の「月の潤い・太陽の熱・星の冷たさ」に目を惹かれた。
三幅対のけっこう大きな軸。日本画のイメージではなく、SF小説の装丁として描かれたような絵。
ソフトに奇想的。太陽の色使い、生命の樹の丸い実、星の輝き。
イメージは奇想的だが、素直な絵だと感じた。

今回の収穫は河合卯之助ですね。初見。陶器の人なんだろう。
「小鳥赤絵花瓶」……これは欲しいと思った。手元に置きたい愛らしさ。灰色の地と赤の線が
とてもいい調和。灰色の地がいいと思ったのは初めてかもしれない。
「柘榴模様水注」……これも可愛かった。この地はきれいな白で、赤の線がより鮮やか。
しかし比べたら灰色の地の方が良く見えた。白好きのわたしとしては意外。
「魚画花瓶」……暗めの灰色の地に藍色の線で魚、黄土色の模様。こういうの、メソポタミア辺りで
似たようなものがありそうな気がする。過去から繋がる陶器の系譜。

陶器作品の他に、彼の陶器下絵?図案集があって、この絵は絵で味があったなー。
陶器も色々な雰囲気のものがあったが、絵もずいぶん違うイメージのものを色々描いた人。
木版での図案集は見た目平易そうで、絵心がないわたしも思わず一瞬やってみたくなる感じ。

小さいエキシビだが、面白かった。こういうのも今後拾って行きたい。

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