誰かに教えて欲しいのだが……これ、どうして「黒と茶の幻想」ってタイトル?
黒と茶って何かフィーチャーされてましたっけ?
恩田陸の小説は、決して好きだとは言えない。
わたしが求める心穏やかな、痛みの全くない小説とは、――真逆ともいえないところがまた曲者だが、
どこまで行ってもうっすらとした悪意が潜んでいて、読むのが憂鬱ですよ。
わたしはほんのちょっとの悪意や不幸、醜さにも、出来れば触れずにいたい方。
それなのに恩田陸の小説は悪意の宝庫です。
だがそれにも拘わらず、恩田陸は創作家として素晴らしいと思う。稀有なる才能。
この本だって単行本600ページ超ですよ。ただ単に長々と書く凡百の作家は多々あれど、
ここまでネタを詰め込む人はそういない。多分5冊くらい書けるネタがこの1作に詰まっている。
この人の書く話はミステリアスだけれどもミステリではない。
というか、ミステリになっている場合もあるけれども、ミステリとして読まない方が楽しめる。
そして、普通の物語が一本の幹、そこから出た枝葉のイメージで語れるのに対して、
……恩田陸の(全てではないけれども)長編は、一本の話じゃないんだよね。
面的に広がる話になっている。こういう書き方をする人は他にいないだろう。
ニョロニョロが――ムーミンのニョロニョロのことだが――集まったような小説だな、と
読みながら思っていた。
自分でも何を言いたいのかわからないが、とにかくニョロニョロを思い出していたのは確か。
変な。変な。変な。
しかしその変さがクセになるというか、どこまで行くんだろうという怖いもの見たさというか、
何か行く末がとても気になる。そして、それとは別なところで、
――おそらく彼女とわたしには大雑把に言って共通する環境があって、それがゆえに彼女が書いた話には
もの懐かしさを感じてしまう。そういう魅力もある。
まあとりあえず読んでいくしかないよねー。
どこまでこの変さが続くのか。彼女の変に底はあるのか。
もう書くことがなくなってきた恩田陸を見てみたい。それはそれで安心できる気がする。
少し悪趣味か。
講談社
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