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◇ スティーヴ・スクワイヤーズ「ローバー、火星を駆ける 僕らがスピリットとオポチュニティに託した夢」

ああっ!しまった!オポチュニティって「機会」って意味だったか!
すっかり「楽天家」という意味だと考えてしまっていた!楽天家だとオプティミストですね。
……まあ別に誰に話したこともないし、この誤解が実害を生んでいる可能性はないけれども。

でもわたし、オポチュニティっていう名前、楽天家だと思い込んでいたからこそ好きだったんですよね。
厳しい火星への道――そんな挑戦をする機械に、「楽天家」とつける。何か良いじゃないですか。
火星の赤い砂の上を、「楽天家」が走る。ミッションの重大性と、二度と地球へは帰れない
孤独を背負って、それでもなお鼻歌を歌いながら。

――そんなベタな想像をするのは、おそらく「ウォーリー」のせいでしょう。
「ウォーリーをさがせ!」の方じゃないですよ。ディズニーの映画の方。
オポチュニティの外観って、けっこうウォーリーに似てませんか。
やっぱり人間は機械でさえも擬人化して愛してしまうものですよ。

NHKの「コズミック・フロント」は、惰性で全て見ていると飽きるので、
興味のあるテーマだけ選んで見て吉。1、2年前の「コズミック・フロント」では
キュリオシティとかの特集してたしね。映画は見なかったけど「はやぶさ」もけっこう感動的だし。
宇宙探査物には夢がある。

だがこの本は、――いや、面白いんだけどね。面白いんだけど、なかなか解放感をもたらしてくれない。
……だって、もうずーーーーーーーーっと、挫折ばっかりなのよ大部分は。
こういうジャンルの読み物は、挫折と達成が繰り返されてこそタノシイというものなのに
挫折ばっかり書いてある。夢どころじゃないわ。
もうちょっと“夢”の部分を書いといてくれないとさー。その方が本、売れますぜ。

――ということは百も承知だろうに、これほどまで挫折が続くということは、
大変だったんでしょうねえ、本当に。

まあとにかく、火星まで行く機械を作るなんて――精密機械を重量制限厳守、メンテなしで
壊れないように遠隔操作で動かすなんて、気の遠くなるほど大変なことなのは間違いない。
わたしは今回、本を読んで、しかるのちにwikiを見て、
そもそもの目標稼働期間が90火星日(1火星日=24時間40分くらい?)だったものが、
スピリットは地球時間で6年あまり、オポチュニティは10年近く稼働し後者は現在もなお稼働中、
というところに涙を禁じ得ない。

いや、機械ですよ。機械はプログラムに組まれた通りに動いているだけですよ。
でもやっぱり思うじゃないですか。がんばってるんだなあ。がんばってくれてるんだなあって。健気。

読んで愉しい。おすすめ。

ローバー、火星を駆ける―僕らがスピリットとオポチュニティに託した夢
スティーヴ スクワイヤーズ
早川書房
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内容的には、若干馴染まぬ単語が多用されてるとは思うけど、そういう部分は飛ばして読んでも
全く問題ないと思われる。

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