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◇ ヘンリー・ジェイムズ「鳩の翼」

アメリカ文学最短コース遍歴中。

なんか不思議な書き方をする小説ですね。
わたしは総体から細部へ、という説明じゃないと頭に入らないので、
まず基本設定をはっきり書いてほしいのだが、この作品は状況を説明する前に、
人物たちの心情を細かく書いていってしまうので、この人は全体のどういう位置にいる人かというのが
読んでいてもなかなかわからない。舞台っぽい流れかもしれない。

読んでいて、“腹の探り合い小説”という言葉が浮かんでいた。
日本人はおそらく世界の中でも相手の気持ちを忖度する傾向が強い人たちだと思うから、
実はここに書かれているような(ちょっとした仕草や表情から相手の気持ちを)読むことは、
日常的に行っているような気はするが、それを改めて活字で追体験すると、

――疲れますねえ。

もう少し人生を単純に考えたらどうだ?と言ってやりたくなります。登場人物たちに。
もう少しスナオに生きてみたらどうだろう。

というよりも、やっぱり書き方が苦手だわー。
幹から枝に話が移って、その枝を収束させてから次の枝に移って欲しいのに、
おぼめかして、もやもやもやと話が霧の中に沈んでしまう。
はっきり言わんかい、はっきり。ストレスが溜まるわー。

まあわたしはシンプルな書き方が好きですね。わざわざそんな技巧的な書き方をしなくてもと思うし。
予想ではヘンリー・ジェイムズって、スタンダードの中のスタンダード、というイメージだったので、
この技巧は意外。悪い方に意外だったかな。

「鳩の翼」と言えば……「ノッティングヒルの恋人」で、ジュリア・ロバーツが劇中劇で
(ロケ風景を)やってたね。アメリカ娘の役柄だろうから、ミリー役に擬せられてたんだろうなあ。
しかし鳩って雰囲気じゃないし、大富豪の一人娘って感じでもないけど。
でもケイトって雰囲気では更にない。

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