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◇ 山村宏樹「楽天イーグルス 優勝への3251日」

まさに今!このタイミングを狙って!出版された山村宏樹の著書。
こういうのはタイミングを逃すと買わないので、流れのままに買いました。

山村は解説者としてそれほど面白いことは言わないけど、
何しろ去年まで選手だった人なので、選手のことをよく知っていて、そういう部分が興味深い。
性格も良さそうですしね。選手としてはまあ……良い時も悪い時もあったが。

全体的に万遍なく、という本で、チーム創設時から今シーズンの優勝まで、公平な配分で書いている。
それは登場してくる人物も同じで、いろんな人に(気を使って)バランスよく触れている。

そうだなあ。チーム創設時は、どうみても準備不足だったのに時間に追われてバタバタと決まっちゃった。
地元民から見ても「えっ!そんなに簡単に決めて出来るの!?」というほどあっけなく。
棚からぼたもちのように仙台にプロ野球団が出来ることになり、ほほー、と思いながら、
わたしもフルキャストスタジアムの見学会や練習見学に行った。
いつだったかの練習の時、見学者のおばさんが「オカベさんっ!」と掛け声をかけて、
磯部本人に「磯部だから」とツッコミを入れられたのも苦笑の思い出。

外から見ててもその準備不足ぶりは感じられたが、
この本によると、地味なところではブロックサインの案出などということも大変だったらしい。
素人から見るとサインのしぐさなんて、どの球団も大同小異に見えるので、
「それっぽいのを適当に当てはめていけばいいんじゃない?」とか思うのだが、
そこまで適当なものでもないらしい。やはり一から作るのは大変だとか。
遠征先での練習場所、トレーニングジムの確保も苦労したそうだ。これはわかるな。
人数が人数だからね。広さも必要だし。

初年度4月、11連敗の後ようやく勝った試合は、わたしは球場で見ていた。たしか金田が投げてた。
最後の1アウト、マナー違反ではあると思いつつも投手コールをせずにはいられなかった。
今シーズンの田中まーのいつだったかの試合の時と同様、応援が勝たせた試合だと思っている。

田尾、野村、ブラウン、星野の各監督のこともみんなちゃんと面目が立つように書いている。
野村監督が初期に監督になってくれたことはやっぱりプラスになっていると思う。
データ分析の徹底は、野村さんが一番厳しく仕込むことだと思うので。
今なんかパソコンで、データも動画も取り放題見放題な気がするけど、
それを活用するかどうかはやっぱりそれぞれの意識の問題。
その“意識”にはチームカラーも大きく関わってくるだろう。分析の徹底がチームの伝統になって欲しい。

ちなみに、岩隈はじゃがりことトッポが好物だそうです。
山村に「じゃがりこ、食べます?」とよく聞いていたんだとか。

震災時のリアルタイムでのチームの雰囲気はこの本がよく伝えている。
わたしは、チームがどのくらいの危機感で過ごしていたかは知らなかった。
彼らは離れた場所にいた分、メディアを通じての情報に触れた分、ショックは大きかったのかもしれない。
当時一軍は兵庫県明石市、二軍は埼玉戸田にいたそうだ。
地元は、停電になっていたし、テレビを見られるようになったのも翌日か翌々日のことだったから、
それまではどのくらいの規模の地震かは正直よくわかってなかった。
テレビが見られるようになってから、改めて知ったくらい。

でも外側から、心配だけしている状態も大変だっただろう。
帰りたくても交通手段も確保出来ないほどの災害。
最低限、家族の無事を確認しても、その他の知人はどうなのか。

――あるんだ、本当に。交通途絶に近い状況が。買える食糧が、ガソリンがないという状況が。
自分の人生で炊き出しに並ぶということがあり得るなんて。

また、「野球をしている場合なのか?」という自問は素人が思うよりも野球人には重かったんだろう。
まわりにはそんなことを言っている人はいなかったが……それはわたしが野球好きだから当たり前。
わたしは、被災地を慰問に回る選手たちを見て、それはそれで気の毒に思っていた。
被害を強制的に目の当たりにしなきゃいけないなんて……
ニュース番組も見られないわたしには無理だ。

最後は今年の快進撃。今のレギュラーについて順番に触れていって、
……この辺、山村はやっぱり気配りの人って感じやね。

ラズナーが「日本が大好き、仙台が大好き」って言ってるそうだ。
わたしが見るのはマウンドでのあの茫洋とした表情だけなので、「大好き」というアクティブさ(?)に
微妙に違和感があるのだが、来年、帰ってきて欲しいよなあ。
キャリアを日本で終えたいという希望があるそうだ。まだ32歳なんだから今後数年は活躍してほしい。

しかも最後に渡辺直人のことまで出てきたのはびっくりした。
それにからめて“仙台、東北のファンは温かい”と持ち上げて幕。
だからといって気を悪くするには及びませんぜ、他地域のイーグルスファンの皆さん。
とりあえず地域名つけとかないと、地域密着ってことになりませんがな。

――というような感じで、全体的にイーグルスファンが読めば楽しい本でした。
どうぞよろしく。

だがしかし、最近一般的にとても気になっていることなんだけど、
「すみません」と書くべきところを「すいません」と書くのはやめて欲しい。
すでに発音的には「すいません」となっているし、音便化の普通の流れだと思うけど、
それをすぐ書き言葉に反映させるのは抵抗がある。
キャラクター的に、あるいはシチュエーション的に「すいません」が表現として適当な時もあるが、
嶋捕手や星野監督が、震災がらみのスピーチをした時に「すいません」はなかろーと思う。
元々は済みません、澄みませんなんだからさ。

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