同じ著者の「ホモ・ルーデンス」と並んで、よく聞く書名。
いつかは読んでみようと思っていたので今回読んでみた。
オランダの歴史学者の、中世についての一般概説書。ということでよろしいか?
みっちり書かれた、しかしそういう内容のわりには詩情漂う読みやすい本でした。
まあ内容を理解して読んだか、と言われればそうでもないけど。
でもわたし程度の一般人も、雰囲気を愉しむくらいは出来る本。
ホイジンガは1872年に生まれた人。わりと昔やね。
たっぷりした知識を、ただ羅列するのではなく、味わいのある文章で書きつづっている。
学者は、ガチガチの文章を書きがちなものだけど、そこに情熱が感じられる場合には
名著となる可能性が増す。石田幹之助の「長安の春」しかり。あとは……いや、他にもある気はするけど、
あんまり思いつかないなあ。フォションの「ラファエッロ」とか。まあフォションはあまりにも
熱が入り過ぎて、わたしはそれについていけなかったんだけど。
冷静に公平にと心がけていつつも、それでもにじみ出る情熱。そういうのに弱い。
これは訳者に人を得たんだろうなー。堀越孝一さん。
読んでいる間も思っていたんだけど、あとがきを見て確信した。この詩情は訳者の手柄だ。
あとがきの中で、直接的にいいと思ったのは、奥さんへ、周りの人へ、そして恩師への言及。
良い文章だったのでぜひ引用したいと思ったのだが、……16行あるので諦めました。
16行のタイプ打ちはちとツライ。
ホイジンガになり切って訳したという内容の文章があり、さてこそと思った。
わたしには、ホイジンガと堀越孝一が重なる。
やはり人間は情熱がなければ……。
こういう時に、ふと思う。
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ところで、流す程度に読んでいたこの著作だが、ひっかかった単語があったので
メモとして残しておきたい。
この作品はおよそ偉大な彫刻にのみ特有の平静の境地(アタラクシア)を、
あやうく失いかけているという恰好なのである。
引用部分は、この作品(どの作品かしらん)は偉大な彫刻ではないよ、ということを
言っているだけなのだが、アタラクシアという単語を初めて聞いたので目に残った。
wikiを読んで、わかったようなわからんような気分になったけれども、
――たしかに、名作には静穏があるよね。それは彫刻に限らないと思う。絵にもある。
美しい美術作品には、ピタリと合ったピントのような、ここしかないという落ち着きがある。
わたしはそれを理想美だと思っていたのだが、アタラクシアという言い方があることを知って
ちょっと嬉しい。理想美とアタラクシアの関係は自分の中でまだ練れてないけれども。
忘れないように、メモ。
この表紙はクニュニー美術館にある「一角獣と乙女」。
ザ・中世!ですね。いいものを持って来た。
ところで関係ないが、青柳正規さんは文化庁長官になっていたんですねー……。
知らなかった。わたしは現代社会のことはほとんど知らない。
あの人は、喋ると情熱が感じられて好きな学者なのだが、前に読んだ著作はガチガチでしたな。
もう少し柔らかく書いて欲しい気がした。
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