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◇ 有川浩「県庁おもてなし課」

面白かった。例によって、な面白さ。

しかし序盤の話は、……いくらなんでもあり得ないだろうと思ったんですけど。
いわゆる“お役所仕事”という言い方はよく聞くが、まさかここまでアホじゃないだろう。
ここまでアホな人たちに税金が非能率的に使われているのかと思うと腹立たしくなる。
はいはい、でもこれはフィクションなんですよね。

役所が保守体質になりがちなのはちょっと考えてもわかる。
攻められないんだよね、構造的に。そして防戦一方。
防戦ってさ、それこそ蟻の一穴さえ逃さぬようにしようとすると、それはもうものすごく非能率的。
ある程度の穴には目をつぶらないと、時間と金を使っていく一方なのにさ。
……などと役所体質に思いを致すと暗然として来るばかりなので、その部分は忘れよう。

この人は「図書館戦争」と「三匹のおっさん」を読んだのを覚えてるけど、
現実の問題をファンタジーにして面白く読ませるのがすごく上手いね。
今回の問題は地域振興。それから、お役所体質への風刺。
まあ、わたしもこれを高知県庁おもてなし課の話として読んだんだから、
いくらフィクションだと断り書きをするといっても、このタイトルで実県名を挙げて、
よくこの話を書くのを了承したよね、高知県。
それこそお役所体質で、小説のネタにするなんてトンデモナイ!ということになりそうなもんだった。
がんばった、と言っていいのではないか。

例によって有川浩らしく、甘々な恋愛要素有。2カップル分。
わたしは吉角さんチームの少し屈折した恋愛の方が好きだったかな。
掛水君側は、どストレートにさわやかな恋愛でそれはそれで良かったが。

清遠の親父さんはかっこ良かった。
課長の下元さんはいいキャラクターだったのに、思ったほど活躍しなかったね。
もうちょっと動かしても良かったと思うな。
だが、多紀ちゃんの年齢設定には若干疑問。年齢というか、設定に疑問。
23歳で、社会経験と言ったら県庁のアルバイトしかない、というのにあの有能さはちょっと無理かな。
もう少し年齢を上げて、派遣とかアルバイトで経験豊富、という設定で良かった気がするよ。
まあ初々しさを前面に出したかったんだろうけど。

読後、高知県に行ってみてもいいかな、とちょっとは思ったかなー。
四国に行って来たばかりだが、行く前なら高知も行く日程にしていたかもしれない。
でもわたしは基本的にアウトドアスポーツに興味がないんだよね。
旅行は街歩き派だし……。やっぱり交通アクセスが悪いのは致命的ではある。
ちょっと寄り道はしづらい。目的地として行くしかないが、正直、現時点では(この本以外で)
旅行先としての高知県はそれほど魅力ある所ではない。
全てを対象にすることも出来ないだろうし、わたしみたいな志向の人間を取り込むことはまだ難しそう。
ああ、でもパラグライダーは以前に短期間だけやったことがあるので、
パラグライダーにはそそられたなあ。

「けんど、おもてなしがある。」
じゃ駄目だったかね?てっきりそう来るもんだと確信していたのに(^_^;)。
あまりにも読め過ぎ?でも「光」じゃピンと来ないなあ。
ちなみに日照時間最長の県は山梨県、次が高知県だそうだ。ネット上でちょっと見ただけなので、
精度は不明だが。

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