ミステリです。絵の謎解きをしながら宝探しをするという趣向の。
面白かったです。
ありがちな趣向だが、実際に書くのは難しそうだ。
だって絵から、そうそう上手く宝探しなんて出来ないよ。よほど意味ありげな絵じゃないと。
この本には、アリガタイといえばアリガタイ、当然といえば当然だが、
その絵のカラー絵が綴じ込まれているんです。
この絵について解説でもう少し触れて欲しかったなあ。
イラストレーターは誰なのか、くらいは書いてあげてもいい。
けっこう面倒な仕事でしょう。作家のリクエストはずいぶん細かかったと思うし。
人物はそうでもないけど、草木は魅力的です。
謎解き部分は細密、というほどではなかったが……
そこそこに丁寧、そこそこに杜撰、という感じで足して2で割って適度。
英国の風物、歴史的風景がふんだんに出てきて、そういう部分が好きな人ならこの話は愉しめるだろう。
わたしが愉しんだのは主にこの部分かな。
がっちり書き込むタイプの英米ミステリだと、あまり血肉が通ってないキャラクター造型も
よく見かけるが、本作はキャラクターも適度。主人公たちのラブストーリーがけっこう前面に
出てきているので、苦手な人もいるだろうが……
あ、そういえばこれは、池澤夏樹推薦で読んでみたのでした。
ただ、主人公が画商にしては聖書とかギリシア神話とかの知識が少なすぎる気がした。
まあ専門ジャンルが19世紀イギリス風景画の画商という設定なので、そんなもんなのかな。
作者本人はおそらく知識がある人と思われるので、一般人のラインをどこにおくかは難しいのかもね。
あとは杉村比呂美さんが表紙を描いていることが、わたしにとってはアドバンテージ。
彼女が表紙を描くと、魅力8%増し。数字に根拠はないけれども。
彼女が表象するユーモア・ミステリの世界が好きなんだな。
謎解き30%、英国風味40%、ラブストーリー20%、その他10%ってところかね。
いい感じ。ゆるやかな午後を楽しめます。
コメント