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< のぼうの城 >

これはアカンなあ……。

わたしは野村萬斎さんが好きだ。だが、彼の映画はおそらくB級であろう、と行く前からカクゴしていた。
でも一応B級もキライじゃないですからね。ただしB級にも色々あり、A級ならば良い映画かどうか、
ある程度一般的に言えても、B級の場合はテイストが違うとまったくダメダメな映画になってしまう。
そして今回は……ダメダメだったのであった。

そもそもテイストの違いで片づけられるダメさ加減ではなかった。
脚本がなあ……。疑問な作り。全体的に疑問。

初っ端、高松城水攻めの映像があり得ないほど派手だったのは許容範囲。
若干苦笑いも混じるが、ここはド派手でもいい。

でも、石田三成はいいとして、マイナーどころの大谷吉継、長束正家を
年恰好同じような役者を並べてさ。みんな甲冑まっくろだし。
あんな短時間で、石田三成の立場と長束正家と大谷吉継の説明をし、忍城の人間関係を説明し、
けっこう込み入っている秀吉と三成と忍城側の関わりを描くのって無理じゃない?
のちのちわかってくるとはいえ、見てる時点ではすっきり説明されてないので、
ストレスを感じる。あとでわかるという話の作りは下手くそな証拠。
まあそれでもこの辺は割り切ったけれどもね。

でも本筋が動き始めてからもなあ。
西村雅彦と平泉成の力関係もすっきりしないし、
野村萬斎さんがあの癖のある演技であんなことを言うと、絶対何か裏で企んでいると思うし、
だいたい西村雅彦、小田原城に詰めている状態であっさり開城したら、アンタの命がそもそも危ないだろう!
その状況で、留守番役に「戦わず開城しろ」と言えるかね?オカシくない?

鈴木保奈美が西村雅彦を腐してるのも、説明が欲しいところだ。
パンフレットを見て知ったが、鈴木保奈美と榮倉奈々が義理の親子だっていう言及はないよね?
義理の親子設定も不要だった気が。史実にのっとった部分ならしょーがないけど。

細かいことを言うなら、秀吉が軍議の場で佐吉呼ばわりするのも疑問だし、
(そんなことだから石田三成が周囲に軽く見られるのではないか!)
市村正親の演技が、軍議の場でも身内だけになった後でも態度が全く変わらなかったことも変。
公の場、私的な場と、人間の態度って変わると思うよ。
女湯に乱入させるシーンの必要があったか?とか。百歩譲ってありだとしても、
女たちに悲鳴をあげさせるのは変だよなあ。

あんな小さな城で、一回小競り合いに負けたからって、そこで28キロもの堤を作って水攻め。
無理があるだろう。手を変え品を変え、3、4回攻めてダメで初めて「水攻めじゃ」ならわかるが。
その伏線としてわざわざ高松城攻めを最初に出してるんだし。
だが、あの高松城部分を削除して説明に費やしていたら、その方がまともだった気がしないでもない。

鉄砲と弓が届かない範囲であればいいんだから、あんなに広い範囲を囲む必要はない。
堤の大きさに対して、城の描き方が小さすぎるんだよ。
いくら利根川と荒川が水量豊かな川だって、あの大きさであの勢いで水が流れ込むとは思えない。
もっとじわじわと増えていくはず。だいたいあの水の勢いで、どうやって和尚が生き残るっちゅうねん。

まあ今回映像的に派手指向だったとは思うが、
あまりにもやりすぎだし、しかも震災後でもあるので大変悪趣味だと感じた。

堤を壊すのも、あれじゃバレバレやないか!
あんな風に壊すはるか以前に気付かれて捕まるわ。
しかもほとんどたった一人で壊したわけですよね?
そして決壊した瞬間に、まさにその場にいたにも関わらず、溺れ死なずに生きてるんですよね?かぞうさん。
オカシイ。

萬斎さんの田楽踊りとか謡?とか、本業を上手く使っていたけど、
萬斎さんで天真爛漫な人物を表現しようとするのは無理があろうぞ。
彼は癖が売り物の役者なんだから、そこらへんは考えてくれないとー。
彼のキャラクターなら、昼行燈に見えても実は……という一択しかないと思うのに、
実は……がないとは。

水が引いた後、あんなにすぐに入城は出来んし、もっとドロドロです。
石油を使った火攻め(攻めてないが)も、あの位置で燃やすと多分櫓も燃えますけど!
あの位置関係で何で鉄砲が当たらないんだよ!とか、ツッコミどころばっかり。
現代語と古語の混在もやだったし、監督と脚本、しっかりして!と言いたい。

まあそんな中で、良いところを探せば……

とにかく佐藤浩市の存在が有難かった。
すごく好きな役者というほどではないけど、彼関係は概ねまともだった。
彼が出てくると心が休まった。

それから上地雄輔!すごくまともに役者じゃん!
びっくりした。人には隠れた(?)才能があるんだなあ。
(現時点で相当数のドラマ・映画に出ているようだが、わたしが見たことがあるものは多分ない)
今後、役者道に邁進して下さい。

あと忍城のたたずまいは良かったね。CGだとはわかっていたけど、思わず、
「ああ、こんなところがあるなら行ってみたい……」と思ったもの。
美しい水城の風景。

萬斎さんなー。
「陰陽師」はお気に入りのB級映画だけど、「陰陽師2」とこれで2連敗。
次に期待。誰かB級を面白く撮れる監督はいないのか。

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