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GPシリーズ2012 アメリカ大会 男子。

ショートプログラム。

ベルネルは、前のキレが戻って来たかと思ったのに、後半はやはり去年と似たような不安定さで
終わってしまった。去年あそこまで復活したジュベールを見習って欲しい。

ブレジナは、安定している奴だと思っていたのだけれど今回は駄目だったなあ。
調子悪いっていうし、今季は切り替えてこられるかねえ。
選曲が、今回は失敗したかも……。速いテンポは、ぴったりのれればかっこいいけど、
あそこまで速くすると無理があるし、そうすると印象が悪くなる。
ブレジナはまだ若いのに、少し顔がおっさん化していた。

メンショフはジャンプが見事だった。が、その他は印象に残ってない。

町田樹は、何よりもまず振付がいい。ランビエールお手柄。
そのプログラムを、まだ少し制御出来てないくらいに力いっぱい踊って見せた町田もお手柄。
重心があっちこっちぶれまくりだった感もあったけど、シーズン初戦なので
これくらい体当たりの方が迫力を感じる。あとはおいおい仕上げていけばいいので。
初戦でここまで体を動かして来たのはエライ。
世界のトップの仲間入りするかな?

ジェレミー・アボットは、ジャンプ失敗してたけど、それがどうしたといいたくなるほど演技がいい。
面白いプログラムを作って来た。彼は完全に独自の道を行っている。
本当に世界を作る。楽しませてくれる。
それは王道ではなく、行き着く先は金メダルではないかもしれないけど、
わたしは5、6年前迄の、メダル取り放題だったけどつまんない滑りだった彼よりも、
今のアボットの方が格段に好きだよ。

小塚は色気が出てきたねえ。滑っている限りにおいては青年だ。
喋るとまだ少年っぽいけどー。
若干まだ粗削りだと感じた。少し複雑な表現の振付だと思うので、十全に表現するのには
まだまだ時間がかかりそうだ。でも相変わらず滑りがきれい。
彼もコンスタントに努力を続けて行ける人なので、今後の心配はしていない。

羽生結弦。
ネットニュースのヘッドラインで「史上最高点でSPトップ」とあったので、
彼の年齢では到底不可能に思えた「生来の情熱的で優雅な滑りとブライアン・オーサーによる
点の取れるプログラム構成」がさっそく機能したのか?と期待した。

機能してるんだろう。多分。
今回は腕、というか上半身をだらだらさせていた。そういう振付もやってみた方はいい。
4回転も見事だった。おいこら、と言いたくなるほど完璧だった。
トリプルアクセルも、……あんた、どれだけ跳んだよ?と言いたくなるほど長距離のジャンプだった。
舌を巻く。この段階でこれならどこまで行けるんだろうと。
ただ去年のGPファイナルで見せた、目を離せなくなるような渾身の滑りではなかったけど。
まあ、まだそういう滑りをする時期じゃない。

※※※※※※※※※※※※

フリー。

ベルネルは……もともと飄々とした味のある人だったけど、力強さとか生命力の裏打ちのない軽みは
単にさくさく動いているだけに見えてしまう。前半はそう見えた。
後半はなんぼか持ち直した。去年の目を覆うばかりの出来に比べれば一段二段、
上向き加減にはなっているかもしれないが、わたしが期待するベルネルらしい滑りにはまだまだ。

ブレジナ。
ああ、フリーは去年と同じなんだ。ま、いいプログラムではあると思うけどね。
ベルネルと同じで、なんか勝負にかけるがっついたものが感じられない。
投げやりというか諦め。ブレジナも後半、持ち直して来たけど、

町田樹。
良かったっすねえ。フリーのプログラムもいいよ。わかりやすすぎな振付ではあるが。
上半身のラインがきれい。あの人は胸の張り方に特徴がある感じかな。
だが、個人的にはストラヴィンスキーの不協和音を毎回聞くのかと思うと少し凹む。

ジェレミー・アボット。
わたしはこの人、ジャンプ失敗してもユルすよ。
ジャンプと関係ないところで、独自の世界を築き上げてるじゃないですか。
その世界を堪能させてくれるだけで「いいもん見せてもらった」とアリガタイ。
……とはいえ、今回はジャンプ失敗しすぎで本人大ショックだったようだが。
ショートとフリー、がらっと雰囲気を変えてきて、どっちもいいねー。
名プログラムになりそうな予感。シーズンラストまでどこまで上げてこられるか、完成が楽しみだねー。
ショートはエンターテイメントとして大変楽しく、フリーはアボットの繊細さが大変活きている。
これを佐藤有香さんが振付したのなら、尊敬してしまいそうだ。

小塚崇彦。
良かった。滑りは良かった。精度は全然だけど、他の参加者のつぶれぶりからすれば、
やはりそこは実力的に一線を画す。
――でもさ。このフリーのプログラム、つまんなくない?

正直、は?と驚くくらいつまらなく感じた。
腕と上半身の動かし方がひたすら同じだよね?メリハリ全くなくない?
ジュニアのプログラムみたい。子供っぽい。いいの~?オリンピックプレシーズンがこんなんで。

どんなに完璧に滑ったとしても、この振付では感動することはないんじゃないかな、と思った。
その平板な振付で、小塚がどこまで肉づけをしていけるかという挑戦をしているんなら
それはそれでありかと思うけど。
見せどころがない。去年の高橋大輔も多少なりとも平板さに挑戦していたように見えたが、
それは振付自体というよりも盛り上がらない音楽の平板さへの挑戦だった気がする。

まあ審査員はわたしのように、見て楽しめる部分を重視しないんだろうから、
点数はちゃんと出るプログラムなんだろうけどね。でも振付は大事だと思うんだよなあ。

羽生結弦。
まあまあまあ、こんなもんでしょうよ。17歳がこのままあっさりと優勝してしまっても
つまんないってもんですよ。
くやしかろう。くやしかろうよ。でもそれが彼を成長させる一番の原動力だと信じているので、
GP初戦の挫折は(銀で挫折っつうのも贅沢な話だ)むしろ最良の薬だった気がする。

でも4回転の転倒は仕方ないとして、その他のジャンプの失敗と後半の体力不足はいかんなー。
1ヶ月後のNHK杯まで、じっくり作って来いよー。

男子を総じて言えば、完全に精度不足。
シーズン最初から完璧に仕上げてくるのも不可能な話だろうが、みんなけっこう情けなかった。
ゆえに、見ていても心沸く思いはあまりしなかった。
部分的にはね。SPのユヅルの4回転なんかはテンション上がったけど。
うーん。まあ、スケートカナダに(若干の)期待。

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