わたしはタイトルを見て、てっきりSFだと思っていた。
そうしたら、岩波文庫で訳文は旧仮名遣い、うわー、イメージ全然違うやーん。
違和感を持ちつつ読んでみた。
その違和感が、最後まで解消されない作品でしたな。
読みながら「作者は一番どこを書きたくて書いたんだろう?」という疑問が去らなかった。
女性論の部分だろうか。まあ、普通に考えればそうかな。
でももしそうだったら、理論的なことをあれほど延々と書く必要はなかった。
だいたい「あり得ないほど精巧なアンドロイドの製作工程を」「技術者(科学者)でもない作家が」
「100年後の読者が納得できる程度に」書くのは不可能なんだからさ。
ま、3点目については読み手の側の問題だが。最初から読む気になれなかった。
そもそもどうせ理解が出来ないという点と、いい加減なことしか書いてないだろうという点において。
そして、わたしはエジソンを主役におくことがとても不思議。
……いくらエジソンが希代の発明王だからといって、
そこまで超人的な能力を付与するのは、納得できない。
リラダンはエジソンのおよそ10歳年長。まあ同時代を生きたわけでしょう。
わが身に引き比べて考えてみれば、うーん、
……ビル・ゲイツに、うーんうーん、何か画期的なコンピューターシステムの発明を期待するとか?
(想像力が貧困で“画期的なコンピューターシステム”が何かは思いつかないけど。)
どこかの誰だかに(宇宙工学で有名な人)、太陽系内旅行が出来るような宇宙船開発を期待するとか?
そういう実在の人を主人公に、それを幻想小説風味で書く。
うーん、よくわからない。
エジソンをモデルにするのはわからないではないけど。
名前までエジソンにする必要はないと思うんだよなあ……。
そしてねー、なんかねー。エワルド卿がねー。
ミス・アリシア・クラリーをそこまで貶める理由がワケワカランのだな。共感できない。
ここをどうして単純に“どうしようもなく下品で嫌な女”ってだけじゃだめだったのか。
アリシアの欠点は、その俗物性。
……でも普通の人間なら俗物根性なんて、大なり小なり持っているでしょう。
しかも、エワルド卿本人が、アリシアのその完璧な外貌に恋焦がれているだけなら、
「人間、顔じゃないよ、中身だよ!」と、言い古されつくしたツッコミを入れたくなるし、
まあ中身がどうであれ執着してしまうほど美しい人なのかもしれないけど、
その俗物根性はどっちもどっちって感じもするよ。
と、イロイロ疑問がある上に、決着がどっちなのか(アンドロイドは是なのか非なのか)に
興味を持っていたのに、そういう意味では結論を出さずに、エワルド卿とアンドロイドは
船舶事故で海に沈んでしまう。
……納得できませんぜ。リラダンさん。
まあ、100年以上前の小説だしね。
日本でいえば、坪内逍遥の「小説神髄」と同じ頃。
当時、SF的と言えるような題材を小説にしたというだけで、大したことなのかも。
しかしポーが「モルグ街の殺人」を40年近くも前に書いたことを考えると、
古めかしさは否めないかなー。訳文も訳文だしね。
現代語で訳されたらどうなるのか、少し興味がある。でも需要はないだろうな。
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あ、最近の翻訳が出ている。
わたしが読んだのは岩波文庫版だが、貼り付ける分には画像がある方が楽しい……
いや、でも翻訳が違うと別もんだからな。
わたしが読んだのはこちら↓
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