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◆ 大ゴッホ展 夜のカフェテラス(福島会場)

正直に言っていいですか?

――大ゴッホ展は誇大広告である。
全然「大」じゃないじゃん!正確に言えば小寄りの中ゴッホ展。

「クレラー=ミュラー」から持ってきた「大」ゴッホ展ですよ?
あんなに全国的に宣伝しているんですよ?
そりゃー、がんがん大作が来ると思うじゃん。

「じゃがいもを食う人々」は当然来るよね?
わたしの大好きな「花咲く桃の木」も来たりするかな?
ひまわりも一枚くらいは来るだろう。糸杉的な絵も来るだろう。
「亀戸梅屋敷」「大橋あたけの夕立」のどっちかは多分来るよね?
だって大ゴッホ展だもんね!

……まあ実際は、クレラー=ミュラーは典型的なひまわりの絵は持ってないようだし、
「亀戸梅屋敷」「大橋あたけの夕立」があるのはアムステルダムにある
ゴッホ美術館でした。なのでここらへんが来ないのは当然である。

だがその他はね!来るかもと思っていたよね!値段高いしね!
わたしは今回平日限定の2500円?のチケットで行ったけど、通常チケットだと3000円。
それは多大なる期待をするじゃありませんか!3000円あれば本場の入場料ですよ!

あそこまで派手な宣伝をするのであれば、もう少し大作を持って来て欲しかった。
そうか、しつこいほどに「夜のカフェテラス」を出してくるのは、それが一番
人気だからというより、それしか持ってこなかったからか。
あー、気づかなかった。ビジュアルを強烈に押し出したイメージ戦略を取ってるんだろうと
(無意識に)考えていたよ。大作の不在についてはかなり不満を持った。

でもまあ数はこのくらいでいい。ちっちゃいもの山ほど持ってきても見るの疲れるだけだし。
ゴッホ以外の作品も、予想より割合的には少なかった。数増しとは感じず。

来たのはミレー、ルノワール、モネ、マネ、セザンヌ、ピサロ。
有名な作家が1、2枚ずつ。とはいえ、これらも作品自体が有名というわけではなく、
小品とは言わんが、中品程度。まあ今回のを見て「ルノワールを見た」「モネを見た」
とは言えないなあレベル。

そして数的に多いのはゴッホのオランダ時代。――これが功罪あるところ。
クレラー=ミュラーはオランダ時代のゴッホに強い。日本で「これがゴッホ」といって
思い浮かぶ絵はほぼ100%フランス時代のゴッホで、そうでないゴッホを見ることは
難しいから、それを見せてくれたのは良かった。

が、オランダ時代のゴッホも、フランス時代のゴッホをしっかり見てこそだと思う。
それにしてはフランス時代のゴッホが弱すぎた。弱すぎたは言い過ぎにしても、弱い。
王道のゴッホを十分見た上でこういう中品、小品を見るのはいいけど、
このラインナップで「これがゴッホ」とまでは言えなかろう。

ゴッホと言えばあのうねる筆致、モリモリの盛り上げ画法だろうと思うんだよね。
でもそういう絵はほぼ来なかった。「夜のカフェテラス」……人が多くてそばまで寄って
見られなかったのでアレだが、あれは多分そんなに盛り上げじゃないですよね。

むしろ盛り上げという意味では大塚国際美術館のゴッホの絵を見た方が
雰囲気が伝わるんじゃないだろうか。まあ痛しかゆしだけれども。

「大ゴッホ展」。とにかくこのネーミングが不満だなあ。

 

※※※※※※※※※

 

ヨーゼフ・イスラエルスという人の作品が3枚くらい来ていたが、ちょっと気になった。
「ユダヤ人の写本筆記者」レンブラント的。光の当たり具合が。

「麦わら帽子のある静物」
これ、昔見た時すごく気に入った。しかし今回見たら帽子の陶器っぽさが気になったなあ。
麦わらに見えなかった。もちろん画業の最初期だから、まだまだ修行時代だろうけど。

「ニューネンの古い塔」
雰囲気がいいですよね。描いている対象もシンプルでいい。色が暗いので、家に飾りたい
とは思わないけれども。好きだ。

農民関連はデッサンが多分まだ下手。だがヘッドショットで描かれた人物の顔の力強さは
いいと思うんだー。闇に溶け込みそうなほどのグレイで描かれた人物。眼だけが光る。
そして真っ白い頭巾だけが。

「じゃがいもを食べる人々」
これリトなのよねー。リトじゃなあ。まああっちはあっちでクレラー=ミュラーの目玉では
あるんだろうけど……。

チョーク作品は、最初はあまり感心しなかったが、見慣れてきたらいいのもあった。
作品のボリュームとしてはここらへんが多かったね。

ルノワール「音楽家の道化師」
これが大きくて赤くて、へー、これルノワール!?っていう雰囲気の絵画。
この白塗り具合、赤と黒の衣装は歌舞伎を彷彿とさせる。これは見せてもらって良かった。

ピサロもモネも好きなんだけど、これぞ!というものは……。

第4章がパリ時代。第5章がアルル時代。でもアルル時代は2枚。

「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」
こういう絵好きなんだけど、芋を洗うような混雑の中でじっくり見る絵かというと
ちょっと違う……
あ、ルノワールの同名タイトルのやつを思い出さないように。

花が3枚来ていて、どれも良かった。色のきれいさが活きてる。
「バラとシャクヤク」「野の花とバラのある静物」「青い花瓶の花」
こういうの描いてたら、いつかは売れたと思うんだけどな。まあ世界的歴史的画家には
なってなかったかもしれないけど。

写真許可の作品がいくつかあった。
……撮っていいとなるとやっぱり撮らないと損な気持ちになっちゃいますね。
それはみんな同じだから、みんなが撮りたくて、場所を譲らなければならないから、
写真を撮ったあとに絵を鑑賞する時間がなくなりますね。
本末転倒ではある。

たしか撮影許可だったのはこの5枚だったと思います。
「草地」
「自画像」
「レストランの室内」
「石膏像のある静物」
「夜のカフェテラス」

そのうち、好きだったのは「草地」でした。

なんてことない、構図なんかもほぼない小さな絵。でも気持ちいいですよね。
色合いがね。むしろモネとか言われても全然違和感がない。

 

わたしが昔、オランダ時代のゴッホを見て思ったこと。
ゴッホがフランスに行かずにオランダでこういう絵を描いていたら、
もしかしたら長生きしていたかもなあ。あの鮮やかな色彩は、鮮やか過ぎて
精神に無理だったのではないだろうか。

今回思ったのは、ゴッホがずっとオランダで絵を描き続けていたら、国民画家と言われる
未来もあったかもしれないということ。それには暗すぎたかもしれないけど。
でもその闇の中に灯る光も見えたと思うのよね。

今回のメインビジュアルである「夜のカフェテラス」――まあこれしか来てないんだけど。
わたしここ、行きましたよ。観光客価格で多少高かったですよ。
でも当時は円高でしたから、ランチを食べて2000円程度だったかな。
テーブルクロスをお尻で2回も踏んでしまって、隣に座った人に笑われましたよ。
そういう意味では懐かしい絵。

 

※※※※※※※※※

 

そして混み具合はですねえ……。
混んでました!とても混んでました!

まあそれは覚悟の上行ったのではあったが、やっぱり疲れますね。
わたしは17時近くなれば少しは空くんじゃないか?と考え、
14時頃美術館に着いて、ミュージアムショップと常設展を先に見て、
15時くらいから大ゴッホ展を見始めればいいかと考えて行ったのだが、
先に常設展を見ることは出来ない仕組みになっていた。

常設展のチケットを別に買えば不可能ではなかっただろうが、そこまで常設展に
執着もなかったので流れに乗った。

この日は雨だったせいか、いつもそうなのか、建物内に入ると
「入場なさったら講堂へお進みください」とあちこちでスタッフさんがアナウンスしている。
不得要領なまま講堂に行くと(この講堂が建物のほぼ最奥)、ほぼ椅子は空いてなく
入口あたりにうろうろしている人もかなりいる。

整理券とかもらえるんじゃないの……?これでどうやって入場整理するの……?
と疑問に思い、またロビーに戻ってスタッフに訊くと、「とにかく講堂で待っていて
いただければ大丈夫です」とのこと。首をかしげながら戻ると、こういうことでした。

講堂の座席に座った人を順番に案内する。1列目から順番に立ち上がらせて、
1列目の後に2列目に座った人が続くように案内して、最終列まで行く。
そしてそれまで立っていた人が今度は座席に座って待つ。
……なるほど。なかなか頭がいい。ベストではないがベターである。

講堂は座席数230みたい。満杯の講堂の人が一度はけて、その後にわたしが座って、
20分くらい待ったかなあ。もう少しかなあ。思ったよりは早く呼び出しが来て
(座り心地のいい椅子に座って待てるので楽だった)ロビーへ移動。

ロビーはもちろん人でいっぱいで、最後尾に繋がってぞろぞろと進んで行く。
この並ぶ列が(スタッフが考えた結果なんだろうけど)不規則な並び方をしているので、
自分がどのくらいまで進んでいるかわからず、折り返すたびに「まだ先か」「まだ先か」と
何度も思うことになるので徒労感があった。
ここは素直に蛇行列(つづら折り、折り返し)で良かったのでは。

ロビーで並ぶ時間はやっぱり20分強ですかねえ。
こちらも予想よりは早かったんだけど、合計40分強ということになると疲れますよね。
わたしは14時20分頃着いて、15時過ぎに会場入り出来ましたが、
そこから見学が始まるので……途中で昼寝をしてしまいました。

中に入っても当然行列して見ることになります。とてもじゃないが苦行だったので、
列を離れて、人の頭ごしに見る方を選びました。仕方ないが……こうなると
鑑賞という意味ではだいぶねえ……見たのは正味1時間くらいじゃないでしょうか。

そして、ミュージアムショップは本展どころではなく、こここそ最大限に混んでました!
もうほとほと嫌になってほぼ見ずに退散。

 

この時点で16時40分だったので、常設展にちらっと行って、
小茂田青樹の日本画と、ピサロの「エラニーの菜園」に癒されました。
結局一番楽しめたのは、この「エラニーの菜園」だったかもしれない。

 

混むだろうなー、でももしかして思ったほどは混まないかも、と思いつつチケットを買い、
実際に行ったらやはり混んでいて、しかも「大ゴッホ展」と来た絵のギャップに
違和感を持ったので、満足感は低かったのでした。

来年第二弾も企画されているらしいが、今度は行かない。
行ったこと自体に後悔はないけど、この混み具合はやはりわたしには向かなかった。

 

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