たかはしひでみとしか読めないが、実はひでみねと読む高橋秀実。
たくさんの人に「あなたのご先祖様は誰ですか?」と訊きまくるか、
自分の先祖を辿っていくか、どちらかだろうと思っていたところ、
序章に石器時代、第1章に縄文時代のことが書いてあって、
「え?今回こんなにアカデミック?(注・嘘)」と驚いたが、
結局自分の家系を辿ってみる方向に行ったようです。
自分の家系を辿りつつ、いつものようにたくさんインタビューして、
その人々がこぼした含蓄のある(≒ツッコミがいのある)一言を探して文章化する。
相変わらずユーモラスで面白かったですねえ。
先祖を辿るって大変ですねー。地道に戸籍を追っていって、現地を丹念に辿って……
現地に行ったってそうそう無名の人についての話なんか聞けないだろうと思っていたが、
ちゃんと現地に行って、戸籍から知った字名まで行ってみる。
やっぱりプロのライターは粘り具合が違うんだろうな。
たまに「聞いたことがある」という人がいたりして(勘違いであることも多々ある)、
結局四代前?くらいまで辿れたもの。しかも辿りにくい母方系統も。
父方系統はそもそも校長先生だったということもあって若干の探しやすさはあっただろうが。
しかし「高橋先生の墓の跡」を見つけられたのはめっけもんでしたねえ。
本当に高橋先生が、本人の先祖の高橋先生なのか決め手はない気がしたけど、
状況証拠だけでもいいでしょう。誰に迷惑もかけてない気がするし。
何ヶ所ものお寺をめぐって全部のお墓の苗字を確認して……やっぱりプロの粘り。
いろんな人が「それぞれの家系感」を披露してくれて、それも面白かった。
まあ高橋秀実がそういう人々とたまたま出会ったということかもしれないけど、
みんな家系については大なり小なり思うところがあるんだなあ。
その「思うところ」は「家系なんて当てにならないんだから自分の好きなように
思っていたら良い」とか、そういうふんわりであることも含めて。
この人のお祖父さんかお祖母さんの夭折した姉妹に、「ひで」と「みね」という人がいた。
自分の「ひでみね」という名前は名づけの際に、無意識のレベルで影響を
受けているのかもしれないと思ったらしい。
あ、ちなみに真剣に家系のことを調べたくて参考図書を探している人には、
この本は向きませんからね!もっと別な、真面目な本を読んだ方がいいと思います。
――だがむしろこの粘りは、実際に調べる時の参考になるのか?そうなのか?
……本作は平成23年の小林秀雄賞だそうです。
わたしはいいけど、――小林秀雄はこの本で良かったデスカ?と多少は思う。
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