PR

◇ 塩野七生「ローマ人の物語 3 勝者の混迷」

2はポエニ戦争について。次がおそらく三頭政治。
なので今回は若干小粒な、谷間の雰囲気がなきにしもあらず。
とはいえ、ちゃんと知識があれば面白い時代なんだろうけどね。
まあ知識がなくても読んでいれば面白い。記憶にはなかなか定着しないけれども。

今回の登場人物は以下の通り。

グラックス兄弟。
マリウス。
スッラ。
ポンペイウスの若年時代。

「プルタルコス英雄伝」はとにもかくにも一度は読んだから――スッラの名前くらいは
かろうじて覚えていたけど、内容はまるで覚えていない。まあ数十年前だしね。

なかなか面白かった。地味ではあったが。
グラックス兄弟の人生は悲劇的だと思ったし、マリウスには軍事と政治の能力は
やはり別物だよなあと(ごくごく当たり前のことを)思ったし、
スッラはもう少し謙遜する心があればより上手く行っただろうと思ったし、
ポンペイウスは、次からがおそらく真骨頂だろうから、それほど強烈な存在には
まだなっていない。

だが、ここらへんになると、やはりほころびが見えて来る。古代ローマに。

やはり任期がなし崩しになってしまったのが明確なつまづきだと思うなあ。
権力は結局は腐敗する。連続任命の禁止はそれに対する唯一の対抗策ではないかと
現代のわたしも思うのだが、何度かの(例外としての)緊急時の連続任命を経験すると、
「例外適用が常態」になってしまう。やはり前例というのは厄介なものです。

気分とか勢いというものもあるしねえ。こういうののタイミングってほんとにぬるっと
いってしまうのよね。気分で法律が運用されることがないように、
ブレーキ機関をちゃんと設定しておかないといけないが、
設定していてさえ、ブレーキとなり得るかは不確定。
やはり民衆の「気分」に対抗するのは大変な勇気を必要とする。
下手すると血祭りに上げられないとは言えない。

あと、やっぱり一度登った国家は停滞する。弛む。
この時期の古代ローマはまだ停滞というには早いかもしれないが、
やはり青春時代と比べれば少し緩んでいる。理想を追う時期ではなくなっている。
上り坂の時には相当無理がきくものだと思うけど、それは永遠には続かない。
日本で言えば、明治時代が青春時代だろう。

というか、永遠に同じシステムが通用しないんだよね。政治は。
時代により、規模により。周囲の国も興亡し、同じ相手ではない。経済も移り変わる。
それに合わせていける国が栄える。というより、偶然合っている時代だけ繁栄する。

まあ結果的にローマは合わせられたんでしょうけどね。
なにしろ東ローマ帝国まで含めればおよそ2000年――くらいですか?
続いたんだから。まあ東ローマ帝国は別物か。

考えてみれば、これまでのところ、けっこうエジプトの存在が空気ですね。
もう少しエジプトについての言及があってもいい気がするけどなあ。
当時も大国だったんだろうし。
あと20年くらいでクレオパトラとカエサル、アントニウスといろいろあるエジプトは、
もっとローマと影響を与え合っていたのではないか。

ヌミディア王国とか、パルティア王国とかが脇役ながら印象的ですよね。
まあここらへんも書こうと思えば塩野さんはたっぷり書けたんだろうが、
きりがないから「まあここらへんでカンベンしといてやろう」と思ったのかな。

次が古代ローマのメイン、塩野さんが大好きなカエサル。

コメント