カルタゴ関連の話は、どっち側から見るかによって、いつも気持ちが変わる。
世界帝国になりつつあった軍事大国ローマが、カルタゴを滅ぼして街に塩をまいた、
なんてエピソードにはカルタゴへの憐憫の情が増すし、
ハンニバルが強くて強くて強かった頃には、ローマの無力さが気の毒になるし、
といって若いスキピオが台頭してきて、ハンニバルが追い込まれていくのは憐れだし、
ハンニバルが本国カルタゴの支援を十分に受けられなかったのも憐れ。
大カトーのイチジクのエピソードも、最初読んだ時は「継続は力なり」の
ポジティブな印象を持ったが、なんかだんだん粘着質のしつこさを感じて嫌いになってきた。
――というようなことを、今回初めて時間軸に沿ってまとめて読ませてくれたのが価値。
前作でも思ったけど、「ローマ人の物語」はけっこう平易に書いてくれてるよね。
こういう戦いの記録、しかも戦術も書くのは面倒だと思う。
でも正直、図は必要最小限だし、文章で説明されているところは多いし、
文章の説明はありがたいんだけど、悪いけど映像で(配置図を)見たいなあとは思った。
カルタゴのテレビ特番はごくまれにあったりするけど、
ポエニ戦争についてがっつりというのは多分見たことがない気がする。
これ、2時間くらいで作ってくれたら面白いだろう。
まあ今ポエニ戦争を取り上げるきっかけは特にないかもしれないが。
塩野さんにしては珍しく、ハンニバルの「人間」について書いてた気がする。
めったに台詞を使わないイメージだったが、ちょこちょこ出て来たし。
これは史料にあるからだろうね。
平易でありながら詳しく書いている弊害なのか、前半3分の2くらいはうっすら退屈。
これを2分の1くらいの分量で書いてくれたらちょうどだったのではないか。
スキピオが好きかハンニバルが好きかというのは一概には言えないが、
とにかくハンニバルがカルタゴからの支援を十分に受けられないのは気の毒だよねー。
あんな戦上手、ちゃんと支援してたらローマは敗れて帝国にはなってなかったかもしれない。
あと象がひたすら気の毒。
この作品の書き方だと、パックス・カルタゴーナ(ナをつければいいというものではない)が
実現したとは思えないから、ローマが勝って良かったのかもしれないが。
まあねえ、塩野さんが書くと、ローマがかっこ良すぎるのよ。
そんなに良かったか?というのは時々思う。贔屓だから仕方ないけどねえ。
政治がまったく機能してない日本が、この成長期のローマを参考に出来ないかといつも思うが、
参考にするも何も、そもそも政治家が何かを参考にしようなんて向上心を
持ち合わせてないだろうというのが絶望的ですね……
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