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◇ 宮部みゆき「小暮写真館」

かなり前からリストアップして、今回ようやく読んだ。評判良かったですからね。

わたしの中では、宮部みゆきと東野圭吾は好きな作家というよりも「上手い作家」。
読んで「上手いなー」と高度なレベルで感心はするけれども、親近感にはあまり結びつかない。
何冊かずつは読んでいて、ハズレはないんだけれどもね。

だが宮部みゆきは「すごく面白い!」と心から思った作品があって、
それは「ぼんくらシリーズ」。これは本当に好きだった。シリーズ3作あって、全部好き。
わたしはシリーズ4作目を待っていますよ!

本作はそれに次ぐ面白さの宮部作品。

なんでこの厚さで1冊にしたのかなあ、宮部みゆき。と読みながら思っていた。
単行本で700ページ超。全4話で、ちょうど上下巻に分けていい分量なのにね?
と思って最後まで読んだところ、……なるほど。と納得することになった。

これは1冊かもしれない。まあ上下分冊があり得ないわけではないけど、1冊にする意味は
理解できる気がする。1話から3話が果汁100%的な爽やか青春小説なのに対して、
4話でその青春小説が別の物に変わる。たまにやりますよね、宮部みゆきは。

ただ、わたしは全部青春小説の方が好きだったかもしれない。
4話が嫌いなわけではないけど。やはり重いから。

ネタバレあります。

花ちゃんの心の闇をこう設定してしまうと――今までの青春小説が、嘘とはいわないまでも、
非常に薄っぺらなことにならないかね?
たしかに匂わせてはいる。伏線の張り方は宮部らしく、非常に上手い。
でもそれまでの、見たままの花ちゃんの方が好きになれたかもなあ。
これが一点。

もう一点は、そもそも垣本順子にもう少し魅力を添えてあげた方が良かったということ。
癖がある女なのはいいのよ。自殺願望があるのも仕方ないとしよう。
ここももう少しマイルドにしてくれてもいいのになーとは思ったが。

でも序盤、垣本順子は魅力のちょっともない人だったよね?
愛想がないだけならまだわかるが、態度が悪い人はわたしの基準では好意を持ちえない。

宮部みゆきが「ちょうどよく」書けないわけないんだから、
態度を悪い人にしたいんだったら、もう少し、もうほんのちょっと垣本順子の
可愛げを――見てすぐわかるところにぽんっと置いといてくれれば良かったのに。
そうでなければ花ちゃんが垣本を気にすることが納得できないのよ。

ピカちゃんがかわいいねえ。「youtuberのすしらーめん・りくの歳の離れた弟」の
イメージで読んでいた。いや、なかなかぴったりじゃない?もしかして宮部みゆきも
この子をモデルにしてたりしない?と、20分くらい考えていたら、
この本の出版が2010年だったことを知る。りくの弟は今6、7歳?
影も形もないころですね。

そしてコゲパンがすごくいい。このコゲパンが近くにいて、それでも垣本順子に
目が行くかなあというのも納得できない。けっこう年上――4、5歳?もうちょっと?
目を離せないとか、心配で気になる、というレベルならわかるけれども、
これはほんのり恋心だよね?それにしては特に前半の垣本順子は癖がありすぎる。

とはいえ、この2点以外は(重大な2点だけれども)だいたい満足。
やっぱうめえな、宮部みゆき。と思いながら読んでいた。

前述通りだがコゲパンの造型がいいわー。でもコゲパンは別な奴とくっつくのねー。
テンコも、最初思ったよりは出て来なかったけどいいですね。そのお父さんというか
ご実家もいいアクセント。
不動産社長もいい味。

これ、こないだ映画だかドラマになりましたよね?
先日テレビでやったのを録画したはずだから、そのうち見よう。
……と思ったが、テレビドラマ、2013年製作で愕然とした。
いや、つい3、4年前じゃなかったですか?

でもそうですね。神木隆之介が主役なら、さすがに4年前ってことはありませんよね。
高校生の役なんだもの。
不動産社長は笹野高史というのは年齢が上すぎじゃないだろうかと思ったのも、
12年前ならまあまあなんとか……。月日は飛ぶがごとし。

面白い作品でした。

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