装丁がそれっぽかったので、てっきり学者本だと思っていたのだが、
経歴の終盤に防衛大学校教授というのがあるとはいえ、基本的には外交畑の人。大使経験者。
読み始めで文章に拒否感を抱いた。
一文改行。わたしコレ嫌いなのよねー。
日本語の書き方はそれなりに自由度が高いが、基本はひとまとまりの内容を
一段落で書くべきだと思う。
一文改行は、そのまとまりを考える力がないことの表明ではないか。
もう一つは、ところどころの文章がゴシック体で強調されていること。
これはねえ……文章としての品がすこぶる落ちますよ。
そのへんのビジネス書じゃないんだから!と思っていた。
で、最初の10ページ、20ページで読むのを止めようと思ったんだけど、
その日は長時間外出の日で(←免許更新に行った)、この本しか持っていかなかったので
仕方なく読み続けたところ、半分くらいまで来た辺りでわずかに面白みを感じ始めた。
面白かったのは幕末・明治維新の細々したところですね。
なにしろ幕末は、ま~~~~本当にめんどくさい!歴史的出来事としてめんどくさい!
歴史嫌いの人は、幕末・明治維新をばっさり切って他の時代に集中した方がいいと思う
くらいめんどくさい!
このめんどくささは、とにかく関係者が膨大なことと、時間的にも比較的長期にわたること、
その関係者が時間が経つにつれて、立場や意見をまったく変えていることに由来している!
そしてこの本は、概括はほぼないに等しいけれど、一つ一つの動きをただ羅列することは
出来ているので、その細かい動きを「なるほどなるほど」と読める。
ただしはっきりいってこの本の内容は、アーネスト・サトウをタイトルに持ってくるほど
サトウについて述べているわけではない。アーネスト・サトウは序盤はそこそこ、
中盤はほとんど出て来ず、最後に申し訳程度に出て来るくらい。
なのでタイトルは「倒幕の時代――人々の行動を追う」くらいが適当か。
……キャッチーさはまったくありませんがね。
内容の精度も決して高くはない。なので、まあ面白かった羅列の部分も
どこまで信頼していいのか……。なにしろ参考として小説家の言説まで採用しているから。
学者っぽい人の著作名もそれなりに出て来るけど、まあ本人も学者じゃないことだし、
ちょっと信頼性には欠けるかもね。
なんとか最後まで読んだので一応書いたが、よく考えてみれば読むまでではないかも……。
少なくともアーネスト・サトウについて総合的に読みたい人は、
あえて読む必要はない本です。
「遠い崖」を読む前に1冊のしっかりした概説書を読みたかったのだが。
ちなみに「遠い崖」は全14巻です……。
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