虎と月といえば「山月記」で、それは想像通りだったが、冒頭を読み始めた時には
「え、これ短編……?」というような薄さというか小ささで、これがまさか1冊分の
長編になるとは思わなかった。なりましたね、長編に。
久々に面白かったと思った。
柳広司は最初の3冊くらいすごく面白く、今まで10冊ちょっとくらい時系列で読んでいるが、
やっぱり数が増えるとそこまでではないものも出て来て……ここんとこ
ちょっと物足りなかったのよね。
この人は歴史や文学作品を基にして、そこから話を作っていくタイプ。
古代ギリシャが舞台とか、漱石の作品とか、楽しませてもらった。
この話はちょっと不思議な雰囲気の話でしたね。
異世界ファンタジーみたいな趣も少しある。14歳の少年が主人公で一人称の語り手なので、
ライトノベルくらいの感覚で読める気がする。
多分、最後の数行は「山月記」の引用じゃないかな。
中島敦は20年近く前に全集を読んだな。全集と言ってもたしか全4巻。
短い生涯の人だったから。
中島敦の文章は好きだった。水のように端正。名文章といってまず思い浮かぶのは
この人です、わたしの場合。おすすめ。
……柳広司の本の感想だったはずだが、中島敦の話になった。
まあ面白かったということで。
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