正直、本に書いてあった著者の経歴的にそこまで期待値は高くなかった。
経営学者ではあっただろうけど、どうも実業界寄り。ジャーナリスト出身の文筆家に対して
(わたしに)偏見があるのと同じで、実業界寄りの学者には偏見がある。
危ぶみながら読み始めたんですけどね。これがけっこう面白かったですよ。
平易に書いてある。単行本500ページ弱だからボリュームはあるけど、
あまり飽きずに読めた。最後3分の1、4分の1は小栗というよりは
時代全体の状況の叙述になるので少し読みたかったことから離れていくのだが、
それは仕方がないのかなと思うし。
小栗上野介ってほとんど何も知らない。ここ数年読む本で、ちらっと名前が出てきて、
幕末に活躍した人なんだなーくらい。そもそも活躍したとまでは書かれてない。
幕臣の一人で何らかの動きをしたことしか。
わたしが読むような幕末史は倒幕側の人物を中心に見てるし。
だがこの本を読むと、小栗上野介ってすごい人なんだなー!と思いますね。
小学生並みの感想だが。先見の明。時代を読む。
勝海舟が書いた文章によって一般に誤解されている部分があると書いてある。
勝は、小栗のことを「フランスに日本を売ろうとした奴」と言っているらしいね。
フランスから巨額な借款をしようとしたんだって。
が、この本では「そんな事実はない」とし、その頃の小栗の言動、社会状況などを
平易に説明してくれる。
なにしろ偏見があったので、眉につばをつけて読み続けていたんだけど。
半分くらい読んでようやく信じるようになった。
誠実な書きぶりだし、小栗に対する愛情も感じる。引用も適切で強引さもなく。
好著だろうと思った。
そしたら、著者にとってはこれが絶筆だったそうですね。Wikiで知った。
他のラインナップにわたしはほとんど食指が動かないが、これはいい本を残しましたねえ。
1987年刊行。古いけれどもいい本。
この好著に対してのお礼として、この著者の「日本政商史」も読もうかな。
小栗上野介についてはあと数冊ピックアップしているので順番に読んでいく。
小説がまあまあ多いんですよね。面白いといいなあ。
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