PR

◇ 柳広司「パルテノン アクロポリスを巡る三つの物語」

この人はここ数か月で読み始めて、なかなか面白く読んでいる。
4冊目くらいだが、安定していますね。

今までの作品は主に歴史ミステリだった。だがここへきてミステリ要素なし。
ギリシアを舞台にした時代小説というべきにやあらむ。

時代小説という意味で若干内容を薄く感じるが、これはこれで珍しいので良い。
古代ギリシアの歴史小説なら、探せばある。――と思う。
しかし史実と架空の出来事を混ぜて、会話も多用するスタイルはなかなかないのではないか。
軽く読めるし、空気感を感じるし、これを読ませてくれるのは貴重。

別して、パルテノンの装飾については啓蒙されたなあ。
パルテノンについて、おそらくは何百回というオーダーでいろいろ読んだけど、
三角破風のデザインを上半身のみで描く点の画期性について言及してくれたのは
――まあわたしが読み落としてるだけかもしれんが、この本が初めて。
それだけでも読んだ価値がある。

ペリクレスは塩野七生のエッセイで読んだな。でも短いものだし、
今回長めに読めて良かった。こういうので少しは記憶に定着するからね。

柳広司は好調。今後も読んで行く。

コメント