辻由美の著作はここしばらく続けて読んでいて、どの本も面白く読んでいる。
この本も面白かった。
かなり昔(1999年)の本。
――講談社現代新書はセンスのいい表紙デザインがおおむね唯一の美点……
といった印象のあったシリーズだが、だいぶ前にその表紙デザインさえ、
それはそれは面白くもないものに変えられ、それ以来1冊も買っていない。
マジ無理。何が悲しくてあんなにグレードダウンしなければならないのか。
デザイン費を大幅に節約したんだろうけど。
全種類同じデザインの中公新書の方がずっと上品。
まあその間に新書の地位も凋落しましたよ。
いや、地位が凋落したわけではないのか。もともと「たかが新書」ではあったと思う。
でも昔の新書は、ちゃんとした著者が専門の内容を素人向けに簡単に書いてくれる、
入門書としての側面を担っていてくれたと思うんだがなー。
昨今の新書はダメですね。一時期、雨後の筍のごとく各社が新書を立ち上げたが、
あれ以来新書に対する信頼はまったく崩れた。
単行本で出せないような薄い内容の本を、文庫本よりは利益率を上げられるという
理由のみで新書に入れているという存在になっている。
「いい内容を手軽に読める」のが新書の魅力だったのになあ。
いい内容が各段に減った。
……辻由美の話から離れて、新書に対する恨みつらみになってしまった。
話を戻しましょう。
1999年の本だから、インターネットについて書いている部分は
全然古くなっちゃってるけど、それ以外の「図書館の役立て方」の入門編としては
一読してもいいんじゃないかな。特に卒論を書いたりする大学生は。
調べものをする=ググる、となって久しいけど、
多少なりともつっこんだことを書こうとしたら、やっぱり出版物から
情報を仕入れるのが望ましい。理由は、出版物は人の目に触れる形になるまで、
いろいろなチェック機構があるから。
正直くだらないと感じる本もそりゃあるけど、ネット上の情報の薄さに比べたら
一般的に行って内容は濃い。
参考文献も5冊10冊くらいなら自分で探せるが、
「テーマに付随する副テーマ」まで行くとちょっと迷子になり始める。
わたしは平安時代の流通と交通について調べたことがあって、
その時にレファレンスサービスも何度か利用したけど、
やっぱり相談にのってくれる人によってだいぶ違います。
「うわ、それそれ!その本を探してたよ!」という本を提案してくれると、
さすがプロ!と感激する。……そうじゃない人もいました。
それは仕方ないね。こちらの伝え方も悪いからね。
どうも余談になりがち。
辻由美はフランス語の翻訳家なので、日本とフランスの図書館を比較対象して
書いてくれる部分も多々あって、そこも面白かった。
図書館相互のネットワークの状況は今と相当違っているだろう。
というか、違ってないと困る……。
うちの地元では市立図書館相互貸出をしてくれるのでまったくストレスなく利用できる。
ネットで予約して最寄りの図書館受け取り。10分で完了。正味5分。
棚の間を逍遥して借りる本を選ぶのも楽しいっちゃ楽しいけど、
いつも行く図書館でそれをすると、せいぜい1年、遅くても2、3年で飽きます。
開架図書の顔ぶれってそうそう変わらないですし。
図書館利用は無料で無限に出来る暇つぶし。
読書が好きになると人生で退屈することはありませんね。
まあ、面白い本に出会わないことでストレスが溜まることはありますけど。
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