小林恭二の小説は基本的に「わたしはけっこう面白いけれども、万人が面白い
タイプではないだろうなあ……」と思う。でもこれはわりと普通の面白さ。
しかしこれが1冊目だと、その癖のなさで逆にそんなに訴求しないかな。
わたしの1冊目は「ゼウスガーデン衰亡史」だったけど、あれの癖たるや。
まあ小林恭二の、珍しく普通の小説。
タイトルに「怪談」とありますが怖くはないですね。
人外の話だから怪談とつけた感じですね。なのでおどろおどろしいものを
期待する向きには不向きです。むしろほっこりした話。
……ほっこりはしてないか?
まあ主役の男の腰の坐らなさに好悪はあるとして、女性2人が魅力的。
特にしっかり者のゆずり葉が好きだったかな。単にしっかり者ではないけど。
ちょっとしか出て来ないが、飛鳥も好きだった。
長い空白を経ても変わらない友情。あまり現実味はないが。
さらさらと読めて嫌味の(あまり)ない、葛湯のような作品でした。
今時「葛湯」が例えにならないですけどね。
ほの甘く、ちょっとお腹にたまり、あまり量を食べると飽きる。
もちろん雰囲気は和風。落語の人情噺のような、歌舞伎の世話物のような
雰囲気もありましたな。本人の嗜好を反映しているんだろう。
数ある癖ものの中にあって、普通として光る作品。
褒めてるんだか貶してるんだかわからんな。
好きでした、わたしは。あまり語るべきことはないけれども。
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