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◇ 海野一隆「地図に見る日本 倭国・ジパング・大日本」

宮田珠己おすすめ本から。あの人、地図とか好きなんですよね。

地図をフィーチャーしたエキシビはある。たまに。そんなに珍しくはない。
この本はエキシビで講演をした時に喋った内容を書籍にまとめたものだそうだ。

倭国というのは中国から見た日本、
ジパングというのはヨーロッパ(アメリカ製も一枚あったかも)から見た日本、
大日本は自己投影。
エキシビでは扱わなかった蝦夷地も追加され、4章立てになっている。

一番面白かったのは倭国の章かなあ。最初のインパクトかもしれないが。
あ、そうそう、この本独特の仕立てとして、見開き2ページに
右が地図、左が文章、という形式にしている。通常だとこれは逆だが、
まず地図の方をじっくり見て欲しくてこういう形式にしたそうだ。

地図は製作年代順に並んでいるので、各章最初に見るものが一番古いものとなる。
中国が作った日本の地図最古は1100年付近製作のもの。
この頃は日本は島ではなく、海上に点々と「日本」「倭奴」「毛人」「琉求」
「蝦夷」と書いてあるだけ。この点々が笑えるわー。

そういう点々日本がしばらく続いた後、今度はさかさま日本の時代になる。
どうも中国側では、日本を90度間違った状態で考えていたらしい。
1472年刊の地図では、北海道こそないものの、本州、九州と見えそうな島が並んだ
ようやく「列島」になっている。しかしなぜか90度方向がずれており、
九州が一番北。西が北。

これ、邪馬台国論争の局面でもたしか出て来た話だなー。
中国での方向の捉え方がずれている話。
まあ1200年くらい間があることを考えれば、そう簡単に考えることが出来るかは
微妙だが、それを重視すると邪馬台国が東北にあるという話もアリかも?

順調に形になって来ている日本列島が、……しかし1850年刊の地図では
なぜここまで退化してしまうのか。
復元度20%くらいの日本列島で、北海道には対馬と書いてあり、
本州の地名は長崎と京王しか書きこまれず、九州とは似ても似つかない島に
薩摩と書いてあり、琉球は九州の2倍くらいある。

これが西洋の地図の誤りを正すと大上段に振りかぶって描かれた地図というのだから
可笑しい。

ジパングも大日本も面白い。蝦夷も面白い。そういえばさっきのページで
「蝦夷」と「毛人」が併存していた。
それから触れなかったけど実は「倭国」と「日本」も併存していた。

奔放な想像力が描かせたかに見える地図の数々。
しかし描いた人はその時その時の最上の真実を求めていたんだよね。
その真剣さがこんな可笑しさに直結してしまうところが古い地図の面白さ。

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