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◇ 奥本大三郎「読書百遍」

奥本大三郎はフランス文学教授でエッセイストで虫屋。
ここ数年でツブしているが、かなり面白いのと、まあまあ面白いのと、
うーんなんかいまいち、というものの混交。
これはかなり面白かった部類。

たくさん書いて、さすがに少しマンネリと感じなくもないところ。
本人もただエッセイを書くのに飽きたんだろう、
この本は奥本大三郎が好きな本について書いて、そのあとそれについて
関連する人物と対談する形。

これはこれで手間がかかるような気がするけど、対談相手がその道の専門家だと、
奥本大三郎本人も有益な情報を得られ、読者も啓蒙されるのですごくいい。
河合雅雄なんか本人の著作について本人との対談だもんね。

特に面白かったのは野口富士男の「わが荷風」を取り上げた回。
野口富士男は荷風を批判的に読んだ人(らしい)。
荷風、荷風を見た野口富士男、荷風を見た野口富士男を見た奥本、
そして奥本と、荷風について書いたことのある評論家川本三郎の対談。
いわば四段構えですよ。面白いよね。

だが当然ハマらない人もいるわけで……
阿川佐和子を招んで開高健を語るというのは無理があると思ったぞ。
阿川佐和子はエッセイ面白いし、性格も面白そうだし、好きだけれども
開高健を語らせる相手じゃないだろう。

ということもあるけど、ギチギチにはまりすぎる相手だけじゃないってスタンスも
ユルくていいかも。

あと対談形式とは直接関係ない部分だけど、
シュナックという人の書いた「蝶の生活」が読みたいと思ったなあ。
引用部分を読んで憧れた。すごくきらびやかなの。博物学と詩情の幸福な融合。

面白い本でした。読んで良かった。シュナックに出会っただけでも。

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