ベッキーさんシリーズ2作目。
1作目よりはイマイチと感じた。目新しさが薄れるのだからそういうもんだろう。
ベッキーさんも(最後の話以外は)あんまり出て来ないしね。
このシリーズの魅力は知らない時代を書いてくれること。
舞台背景は昭和初期らしい。――これがわたしにはけっこう意外。
わたしの印象からすると、明治末期くらいのイメージなんだよなー。
昭和初期になっても、そこまで士族貴族と公家貴族が意識されていたかね?
もう明治維新から3世代目くらいでしょう。なくなりはしない、逆に強化される
傾向にあったとしても、それが当然すぎて4世代目くらいにあたる主人公が、
ことさら言い立てるほど意識にあっただろうか。
この辺はちょっと疑問。
ここんところ上流階級のフィクションが続いて――
「あのこは貴族」「抱擁 あるいはライスには塩を」ときて今作。
印象がぼやけるから、似たような舞台設定の話は続けて読まない方がいい。
しかしわたしは読む前にはなるべく予備知識を入れておきたくない方だから、
「抱擁 あるいはライスには塩を」が上流階級の話だということは、
読み始めるまでわからなかった。
前作と同じく、短編3つ。
――が、話としてはかなりの無理を感じたな。
「幻の橋」では浮世絵のやりとりが直接の話のキーになるのだが、
その前の道具立ても背後の事情も、無理やり感が強くて鼻白んだ。
ミステリにしなければならないからと、とても無理して書き込んだ気がした。
無理して書き込んだ感があるのは2つ目の短編も同じ。
当時の風俗や、主人公の心の動きについて書いているところは魅力的なのだが、
ミステリにしようとがんばっているところは難を感じてしまう。
住所を書かせるところとか、いや、いくらなんでも無理……と思った。
「想夫恋」は上手くつなげているけれども。っていうか、眼目はこれだけですね。
3つ目は、建築ミステリ。綾辻行人を思い出しますね。
が、わたしは文章ではこの建物の構造が思い描けなかったよ。
バベルの塔――ジグラットみたいな外観ですか?でも外側にどのくらいの傾斜で
階段があるのか、どんな装飾なのか、一読だとわからなくて。
そして戻って読むのが面倒だから、戻らなかった。
戻って読まないと思い描けない建築は、ミステリのトリックとしては
弱いと思うんだよな。
内部の景色は若干思い描けるけれども。でもだいぶ無理を感じる。
ただの水ならまだしも、色水だというなら。あの高さから滴り落ちるとしたら、
そんなにきっちりと納まるとは思えない。少しでもこぼれたら不審を抱かれて、
そこでおじゃんですよ。
北村薫のミステリが好きだった。が、この作品を読むと、そこまでミステリに
しなくていいから、ストーリーを追求して欲しいと思うな。
主人公は魅力的なんだから。ベッキーさんの書き込みが足りない気がするので、
その2人の日常でいい。なんだったら3編目だけさくっとしたミステリにする
という程度でいいと思いますね。
それでも、久々の北村薫のミステリだから――3冊目も期待して読む。
それで完結ですよね?続かないはずだ。
ベッキーさんの正体は2作目で割れたから、それをどう収束するのか、ですね。
コメント