これ面白かったですよ。高島俊男推薦により読んでみた。
高島俊男をうっすらつぶした(言葉に矛盾がある)のは10年近く前だから、
この本もその頃にピックアップした本である。
わたしが読む本は課題図書リストに入れてから10年ほどで読むことが多い。
リストはもう積極的には増やさないようにしてますけどね。
死ぬまでの本はもうリストアップしてある。
この本が何の話かというと、横浜が外人居留地だった頃にあった毒殺事件の詳細。
そもそも毒殺なのか、事故なのか、妻が夫を毒殺したのか否か。
かなり詳細に調べ、調べられた範囲を丁寧に載せている。
タイトルが地味で、こういう本を読みたい人のところには
ほぼ届かなかろうというのが欠点だけどなー。
完全にノンフィクションといえないのは、かなり筆者の想像が入っているからで。
かなり詳細に事件を追っているんだけど、完璧に整理されているかというと、
そうともいえない。とっちらかった事件だったからこそ今読んでも面白いんだし、
そこまで完璧な削ぎ落しを行なう必要もないと思うから、この形でいいと思うが、
細部はちょっとわかりにくかったりはします。
そういうところは飛ばして読んだ。
最終的に絶対的な答えが出るわけではないので、気楽に読んで吉。
もう少し整理すればもっと面白くなったかもね。
でもこれはこれで、二転三転する状況、右往左往ぶりが出て良かった。
延々事件について書き連ねた後、ラスト5分の1が実際にイギリスに渡って
事件のその後を調べた部分。ここはそれ以外のところと毛色が違って
また面白かった。文献上での面白さと、調査・ドキュメンタリーとしての面白さ。
この時点で著者はけっこう高齢で、視力も相当衰えてたというのだから、
それでも調査を続行したその行動力に驚く。
わたしはこの人、翻訳家だと思っていたが、若い頃は新聞記者だったらしいので
一般的な翻訳家よりも行動力があったのだろう。
この調査部分もまた前半部とは違う面白さがあってね。
もっと分量があっても良かった。上下巻にして「事件篇」「調査篇」にしても
良かったくらい。調査ものって面白いですよね。
まるでミステリ!というほどかっちり書かれてはいないので、
そこまで起承転結を求めても厳しいが、期待しすぎずに読めば面白い。
当時の横浜の風俗誌としても読める。おすすめ。
|
コメント