おや?鹿島センセ、小説ですか?
でも「怪帝ナポレオン三世 第二帝政全史」もけっこう歴史小説の趣があったからな。
そこまで意外ではないか。と思い直した。
しかしこの人は学者で、硬軟膨大な著書のほとんどがエッセイであることを考えれば、
やはり挑戦である。どうなることか、と思いながら読み進めた。
なかなか面白かった。
エッセイと小説は別物であろうのに、かなりみっちりとした小説。いや、達者だ。
該博な知識が上手に小説に活かされ、衒学的とは全く感じない。
(衒学的な小説でも好きなものはあるけどね。多分。)
ただ万人向けの小説ではない。理由は2点。
第一点は変態小説であること。この人は変態について研究(?)している人だから、
鹿島茂の他の著作を読んだ人なら特にこの点は問題ないと思われる。
が、初鹿島茂がこの作品という人は注意。1冊目としては薦めない。
第二点は、歴史小説として始まって、終盤にかけて幻想小説に変化すること。
ジャベールが出て来た時点で、単に名前を引っ張って来ただけのお遊びかと
思ったのだが、ジャン・バルジャンも出て来る。が、ジャン・バルジャンの
存在がよくわからない。
と思っているうちに、巨大な地下通路から下がると実際のモンフォーコンより
数段未来的なモンフォーコンがあるとか、そっくりな図書室とか、
は?と思う展開になっていく。
「種の記憶」とか言われてもなあ。ちょっと無理がありますよ、鹿島センセ。
最後ももやもやっと終わるしねー。
大風呂敷はたためなかった感じです。
全体的な小説としてはかっちり仕上がったとは言えないけれども、
読んでいて楽しかったので吉。よくもまあ書いた、という感嘆。
今後もご健筆をお祈りします。
2015年までの著作は半分以上読んでいると思う。
あと2冊読んで、その後の著作はリストの最後へ回すわ。しかしこの5年で
20冊くらい出版しているから、次に順番が来た時には何冊読まなければならないか……。
恩田陸と並んで、量に戦慄を感じる作家。
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