ねじめ正一といえば長らくテレビでたま~に見かけるだけの人で……
小説家というイメージがなかった。
わたしの中では、ほんとに小説書いているの?という疑惑さえあった。
元々は詩の人なんですか。
今は民芸店店主。
ほう、児童書もずいぶん出してるんですね。
わたしはこれが初ねじめ正一。
なかなか面白かったです。思ったよりずっと王道な小説。
かつおぶしの「にんべん」の二代目?三代目?を主人公にした伝記。
伝記というより時代小説寄りだが。
面白かったが、しかし話はもうちょっと掘り下げて欲しかった気がする。
父が死んで兄へ移って、そこでだまされて苦労する……
という部分をさらっと書いてるから、その後のリカバリーに
そこまで解放感がなくて物足りなかった。
そこらへんをじっくり書いてないから、
お兄さんの披露宴に隣近所同業者で一人しか来ない、という孤立感が
納得出来ない。落ち目になったものからは人は離れる、という理屈は
わかるんだけど、そこまで村八分にされるような状態ではあるまい。
同業者がドライに離れるのはわかるが。
隣近所が冠婚葬祭でさえ近寄らないというのは、よっぽど信頼をなくしたとか、
何か悪いことをしたという時くらいでしょ。
その時点でにんべんは悪いことをしたわけではなく、
商売が落ち目になっただけでしょ?
あと、最後がだいぶ尻切れトンボ。
その後めでたしめでたしで終わるにせよ、もう少し書くことが必要じゃないか。
最低あと3割増しくらいで書いて、もっと繁栄したところを見せて欲しかった。
面白い。が、ちょっと骨格に不満があった小説。
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