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◇ パトリック・ジュースキント「香水 ある殺人者の物語」

こういう文学的な海外ものだと、なかなか読みづらいものが多くて、
最近は途中で止めてしまうことも多いのだが、これは面白くてさくさく読めました。

香水というタイトルで副題がある殺人者の物語。
ふーん?という感じで読み始めた。予想では殺人者の方が比重が重いのかと思っていたが、
匂いの話でした。19世紀(か、18世紀)のフランスを舞台にした話で、
冒頭なんかは町の悪臭が散々描写されるので辟易した。
読むのをやめようかと思った。

概説書を読むと、貴族でも繁華街でも悪臭が、とは書かれているけどそこまで実感できないしね。
この時代の映画なんか見ても、映像的には臭そうでも、見ててもすぐ忘れてしまう。
やっぱり視覚情報しか頭に入ってこない。
その点、文章による嗅覚の説明は意外に入る。……しかしランチタイムに読むのは
ちょっとイヤな部分もありました。

この訳文は読みやすくてお手柄。原文もそうなんだろうが、一文が短くていい。
このくらいだと飽きずに読めるなー。
ただ多少グロいので、タイトルが香水だからといって無防備に読み始めるのは不可。
構えて読みましょう。

サイコパスの話ではあるんだけど、視点はむしろ殺人者側に寄り勝ちで、
わたしはそれに抵抗なく乗れた。(乗れるかどうかは個人差があるでしょうが。)
そういう意味でも引っかかりなく読めた。

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嗅覚についての話もかなり珍しい。昔々、五感を小説にした作家がいたなー……と思って
探してみたところ、すごくうっすらとしたキーワードで、何とか浅暮三文「カニスの血を継ぐ」に
たどり着いた。今までの読書ノートのデータが半分飛んだので、もう探せない。

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