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◇ 桜庭一樹「青年のための読書クラブ」

桜庭一樹、2作品目。

うーん。初めての作家を読んだ場合、1作目を読み終わった時点でそれは点である。0次元。
広がりをもたない。それが100%。
「赤朽葉家の伝説」を読んだ時には、なかなか面白いと思ったのだが、
2作目を読み終わり、点と点が繋がり、1次元になった段階で……評価は少々下がった。

本作も面白かったんだけどね。
でも「意外に前作と同じだなあ」という気もした。あんまり大雑把なくくりにしても気の毒だけど、
「赤朽葉家」も「読書クラブ」も、メタクロニクル――っていう単語が合ってるかどうかわからないから、
創作小史――ってジャンルで、その面白みもないことはないし、書いていて楽しいだろうと思うが、
……その創作小史の次に起こることこそが小説だろう、と思う部分もないことはない。

万城目学やJ・K・ローリング辺りもそうだけれども、作品世界の「設定」部分が「本文」になって
しまうのはどうなのかなあと思うわけです。
設定は、ある意味書き手にとっては甘美な蜜で、我が創造した世界のエッセンス。
創造主の愉悦。それを書いているのは楽しいと思うよ。
でもそれって安易な道なんじゃないかなあ。設定は設定としてストイックに必要最小限に納め、
その世界で起こることを記述するのが小説なんじゃないかなあと……

まあ楽しめればそれでいいんですけどね。
その設定を愉しむというのも読み手の自由だ。

ただ、ずっとこれが続けばわたしの桜庭一樹に対する評価は下がるだろう。
設定の記述に淫する作家は、なんというか……プロっぽくない。
それともたまたま数ある桜庭作品の中で、創作小史を続けて読んでしまっただけなんだろうか。

小林恭二に似ているな。小林恭二は「ゼウスガーデン衰亡史」なんかは
まさにメタクロニクル――極端さを加えた歴史パロディだった。
桜庭一樹はあそこまで実際の歴史をモチーフにしてはいないが、多分系統としては同じですよね。

そしてこの人はペンネームもそうだが、「男の子になりたい女の子」だったってことかね?
登場人物の一人称がおしなべて「ぼく」っていうのも違和感のあるところだ。
ああいう吹き溜まりには、歴代似たような人物が集まるだろうというのは
同意してもいいけれども、あまりにも同じ鋳型で作られているような気もする。
少女漫画的。……うーん、やっぱりライトノベル的なのか。

一応今後も読んでいこうと思うけれども……

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