もう10日くらい前に読み終わっている本で、内容は大筋しか覚えてないのだが、
面白い本でした。
作りが面白い。とにかく作りの面白さ。
ロンドンという場所を、ローマ時代から始めて、時代時代の切り口で切り取った短編集。フィクション。
あれ、ローマじゃなかったかな?その前かな?
面白いのは、そのフィクション部分の登場人物が、基本的に先祖-子孫というところ。
時代が下って新たに加わる家系もあれば、同じ家から枝分かれしたけど
5世代も経つとそのことを全然知らずに他人として関わる、とかね。
家系の話として書いているわけじゃないので、話としては切れてるんだけど、
読者は、本人たちが知らないところで過去の因縁や血縁関係を知っているわけだから、
覗き見的な面白さがある。
いくつかの家系の浮沈も見て来た。
卑しい職業から身を起こして、世代を下がるに従ってそんなことを忘れて
すごく羽振りが良くなった者もいれば、
上代は貴族だったけれども、子孫は娼婦になって、また這い上がっていったものもいる。
家系をべったり書くというよりは描くのはロンドンの町そのもの。
各時代のロンドンと周辺地域の変遷。
しかし超大河小説なので(文字通り。テムズ川のほとりの話だけに。)、
ああ、この人の子孫がこんなに立派になって……というような感慨も持てます。
懐かしい地名が散見される。ああ、この地名はこういう由来があるのか!というのも楽しかった。
古名も興味深かった。
ホルボーンはこの時代にはもう使われていたんだなあ、とか、ケンジントンとか。
ロンドンには橋が一つしかなかった時代とか、ウェストエンドが開けていく様子とか、
そう、立派なギルドホールもあったね。ロンドン博物館のそばには、
それこそローマ時代の遺跡がちょっとだけ残されていたね。
なので、まあ特に読者を選ぶ作品ではないけど、ロンドンに所縁のある人の方は楽しめるだろうね。
フィクションとしては地味。その部分にはあんまり期待しない方がいい気がする。
とにかく長いけどね。
上下巻2段組で合計1100ページくらいだろう。さすがにこのサイズになると、
わたしでも持ち歩きは出来ません。家読みでもかなり時間がかかったので、ゆっくり読んで吉。
クリストファー・レンやシェイクスピアも姿を現す。
チャールズ1世や2世、エリザベス1世も。ヘンリー8世も。
基本的には庶民~小金持ちの部分の話なんだけど、ちらっと点景で出て来る有名人が美味しい。
わたしはさー、イギリスでここまで宗教的な葛藤が長く続いたとは思わなかったよ。
ヘンリー8世が強権によりイギリス国教会を立ち上げた時には、そりゃ混乱は大きかっただろうが、
大陸と比べて、イギリスの宗教的態度は総じてあっさりしている印象だった。
しかし考えてみれば、ピルグリム・ファーザーズを出した国なんだもんなあ……
イギリス人によるロンドンの歴史。
日本だったら、東京を、太田道灌時代から……いや、もっと前からが望ましいけど、
太田道灌入城くらいしか東京の出来事がわからん。
その前は武蔵野で、鎌倉時代は土豪があちこちいたくらいだろうし。
その前となると、各仏寺や神社の由来くらいしか。
武蔵国の国府は……ああ、国分寺市ですか。じゃあその辺から書き始める。
新造成った国分寺の、青年僧でも主人公にして。
ロンドンも、もう少し古代部分を読みたかった気がするなー。
4話目か5話目でもうだいぶ時代が下がっちゃうんだもんね。まあネタもそんなにないであろうが。
著者はエドワード・ラザファード。
「セーラム」とか他の作品も読んでみたいんだけど……
どうも図書館にないっぽい。まさかの原語読み。……いや。無理。
10分の1の分量なら何とか……。1100ページとか無理だわ。
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