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< 東海道中膝栗毛 歌舞伎座捕物帖(こびきちょうなぞときばなし) >

シネマ歌舞伎でした。

ちょっとこの副題はどうかねえ。わざわざ公募したそうだが。
歌舞伎のタイトルは、今時のキラキラネームと同様にわざわざ無理な読み方をさせることがある。
いい例が思い出せないけど「伽羅先代萩」を「めいぼくせんだいはぎ」とか。

しかし歌舞伎座捕物帖をこびきちょうなぞときばなしと読ませるのは無理がある。イライラする。
むしろ「歌舞伎座捕物帖」が地味すぎて、タイトルにつけるのはあかんかった。
最初から「木挽町謎解噺」としていた方が良かった。

と、名前だけの話ではなく、映像そのものもつまんなかったんだよなー。

最初のダイジェストはいつの時点でやってた話なんだろうか。
一年前に舞台にかけられた「東海道中膝栗毛」?それとも本作の前の幕の説明?
可能性としては前者だろうと思うのだが、そうだったら本作の始まりのぐだぐださが許せない。

なんかね。始まりがとにかく嫌だったんですよ。
人がだらだら出てきて、まごまごやってて、話が落ち着く前に内輪ネタで笑わせるっていうの。
面白いという観点から小ネタを詰め込んで来て、つかみはオッケー!と制作側は思ったんだろうが、
まず物語の冒頭は、一度きちっと型を決めて欲しいんだよね。
全然決まらないまま、だらだらと話が始まっていくのが見ててイライラした。
役者をずらずら並べていればいいってもんじゃないんだ。

人を出すだけ出してるから、焦点が合わないこと夥しい。
まずもって、主役の二人の出番が少なすぎるし、全然役に重みがないでしょう。
真ん中の4分の1あたり、ほとんどいないんだよ!

もっと登場人物を整理する必要がある。あと4,5人は削れたはずだ。
探偵役を御曹司らにするのはまあ一興があるとしても、ヤジキタが転がされて
あっちこっちでコロンコロンしているだけでは話として締まらない。全然主役じゃない。
締める時には締めないと。
締まらないまま最後まで行った感じ。

歌舞伎感も薄かったもんねえ。
わたしは元々世話物がそんなに好きじゃない。特に故・勘三郎の力の抜けきった感じが……
ああいうざっかけない演技はテレビなら許容範囲だが、舞台で素の顔でやられても。
本作は大部分がその力の抜けた感じで。
いや、猿之助とかはこういうの、得意になってやってるんだと思うんだよ。
アドリブは得意な人だし。こなれたところを見せてるんだと思う。

でもそもそもナアナアで作った話ってのは、ある程度内輪の観客には面白くても、
せっかく歌舞伎を見ようと思って来た人には面白くないわけです。
いいよ、染五郎や團子に「とても他人とは思えねえ」といったりするのは。ネタとして。
でもその割合が増えすぎると馴れ合いにしか見えない。
こんなナアナアに1800円払うのはイヤだ。

歌舞伎部分というのは巳之助の狐忠信と、児太郎のバレ以降の踊り。
これは良かった。児太郎の舌が真っ赤なのとか良かったですねえ、舞台らしくて。
映画でもテレビでも出来ない表現でしょう。

でもそれだけなんだよな。
あとはぐだぐだ感で最後まで行った。宙乗りをすれば締まるとでも思ってんのかね。
そこまでリッパなミステリを期待していたわけではないが、
全体的な話のぐだぐだは予想外だった。もうヤジキタシリーズは見に行かない。
笑える小ネタをつなげるだけの120分間は(見てて面白いけれども)舞台の意味がない。

「阿弖流為」とか「ワンピース」とか面白かったんだけどなあ、シネマ歌舞伎。

染五郎と團子は、多分染五郎が声変わり後、團子がまだということもあり、
台詞の通り具合に格段の差があった。
中学生ですか……今後の成長をうっすら見守りたい。

そして、中車ですか。うーん。怪演で良かったけれども。うーん。
どうも“歌舞伎育ちじゃない”という偏見があるなあ。
笑也さんの声がだいぶ老けていた。好きなんだけどね。
巳之助は野太い声が笑わせた。だらだらした舞台でこの人はダラダラ感がなかった。好印象。
中村隼人は弱い気がしたな。まあそういう役だけれど、それだけではなく。

けっこう期待していたんだけど、期待外れ。
この後では、見ようかと思っていた「大江戸りびんぐでっど」も行く気がしなくなる。
予告編でも絵柄がグロかったというか、あんまりわたし向きじゃない感じがしたしね。
「野田版鼠小僧」はどうしようか。まあ半年先だからじっくり考えます。

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