うーん。こう言ってはなんだが、時間つぶし以外の何物でもない感じの映画だったなあ。
そんなもんだろう、と思って行ったので別に腹は立たなかったけれども。
役者はみんな良かった。ひたすら脚本が……薄い。
うん、まあ濡れ場は多かったけどね。
猥褻感は無きにしも非ずだが、それより笑い要素の方が多め。
しかしこれでもかというほどディープキスが続いたりするし、今から思い返すと、
役者は大変だ(楽しかった人もいるかもしれないけど)。別にここまでさせなくてもいい気がする。
で、最後になんだかお家騒動の話になるわけじゃない?
でも監督が描きたかったのは濡れ場なんでしょ?
じゃあそこは潔く、もう濡れ場オンリーで完結した方が良かった。
散々まぐわいを楽しんだ二人が、末永く幸せに暮らしましたって話の方がまだすっきりしたんだよ。
終盤4分の1くらいだろうか、突然桂文枝の田沼意次が出てくる辺りからオカシクなる。
田沼意次の妾があんな吹けば飛ぶような町家にいるってことはあるまい。
そんなところに供回り10人も連れて田沼意次が来るってことはあるまい。
阿部寛のことを田沼意次が知っているってことはあるまい。
田沼から松平定信への政権交代があったとしたって、その日のうちに蚤とり稼業が取り締まられ、
捕まって鋸引きってことはあるまい。鋸引きってさあ。せいぜい百叩きだよ。もうちょっとか。
寄せ場送りとか、所払いまではありうるが、鋸引きってないわ。
そんな鋸引きの現場から、家紋付きで長岡藩の侍が阿部寛を拉致しにくるのがない。
武士の体面に関わると思うけど。
その後「お待ちしてました」も変だし、家中の意見が分かれている状態で殿様に会えるのも変だし、
命を狙われていた阿部寛をむしろ守る目的で殿様が蚤とりを命じたとするなら、
もっと殿様はっきりしろよと。暗愚を装って実は名君、とか、あの台詞の流れではありえない。
そして唐突に不正捜査の責任者に抜擢するとか。それを「藩の仇討ちじゃ!」とか。
サッパリ意味がわからない。無理がありすぎる。
もうちっとまともに話を作れっつーの。……結局、思い返すとだんだん腹が立ってくるわけやね。
刀もさ。親の代から何十年も守ってきた刀なら、あの袋の新品感はいったいなんなのか。
たとえ斎藤工が毎日埃を払ってたって、あんな風にはならん。キラキラじゃないか。
誰か注意しないのか。
阿部寛はせめてきれいに袋の口を閉じてから持っていけ。
折紙にはまさか値段は書かないと思う。知らんけど、書かないはずだ。
全てにおいて雑雑雑。
なんかもう、一応形をつけるために適当にやってる感がありすぎる。
もう少し話をまともにするか、でなかったらまぐわい映画にすればよかったじゃないか。
役者のみなさんはお疲れ様でした。
わたしにとってこの映画の白眉は、冒頭も冒頭、お殿様が歌を詠みあげるところでした。
一体どこから声を出してるんだ、松重豊……
いつも落ち着いた語り口しか聞いたことなかったのに、まさかの裏声。
そのシーンでの阿部寛のどんぐり眼も良かったなあ。
わざわざ薄い顏の役者を揃えたんだろうが、あのモブの中で阿部寛の落っこちそうなデカ目が笑える。
だいぶ役者を揃えてるんだよね。揃えてこれか……という薄さ。残念だ。
豊川悦司は前評判よりは色気を感じず。まあコメディですからね。
寺島しのぶはあまり好きな顏ではないので「かぶりつきたいくらい可愛い」と言われているのに
個人的には違和感を抱いたが、体当たり系の女優さんとしてがんばってますね。
この顔ぶれだと、斎藤工が子供のように可愛い。20歳そこそこに見える。
まあでも斎藤工の役柄は……エピソードあるから不要とも言えないけど、取ってつけた感があるなあ。
本筋から考えればなくてもいいというか。というか、本筋をもう少ししっかり作れと。
やっぱり松重豊でしょうな。
最初裏声でちょろっと出て、あとは最終盤に出てくるだけだが、色々な声音を楽しみました。
裏声、情けない声、締まったかっこいい声。
好きだわ。この人。
と、がんばった役者さんには申し訳ないけど、見ようかどうしようか迷ってる人がいたら
見なくてもいい映画だよ、と言わざるを得ない。
暇つぶしと割り切れば可。
近年時代劇が頻繁に作られるようになったけど、もう少し話をちゃんと作んなきゃ
あっという間に廃れるね。
けっこう適当なもの多いもの。チョンマゲと刀さえ出てきてればあとはどうでもいいのか。
衣装とセットに金がかかって、脚本まで手が回らないって?
いや、全ての映画は脚本ありきですよ。
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