これぞ新書。
そもそもここ十数年の新書はほんっとに内容が薄くてハラダタシイ。
新書というのは、ちゃんとした専門家が自分の専門分野について、一般人にもわかりやすく、
とっつきやすく入門編として書かれるべきものなんです。
なのに、なんだ、昨今の新書は。1冊の本にならないものをちっちゃく作るために
いい加減にでっち上げただけじゃないか。
……というのが全てじゃないけどね。
まあこれも1993年の発行。新書がブームになる前で、作りがまともです。
もう多分十数年前になるかと思うが、テレビで何だかフリードリヒ大王の番組を見たんだよね。
それが面白く、しかし全然知らない人だったので、本でアウトラインを押さえて置きたかった。
でもあんまり関連本ってないんだ。これともう1冊くらいしかなかった。
海外の有名人でも、腐るほど番組が作られる人もいれば滅多に聞かない人もいるじゃない?
フリードリヒ大王は、全然聞かない人のうちの一人。
プロイセンという今はない国の歴史上の人物ということもあるだろうし、
近代といえば近代の人なので、アレクサンダー大王とかツタンカーメンとかと比べて
ロマンが足りないのかもしれない。
この本面白かった。
アウトラインをすでに知っている人向けに「人間フレデリック2世」について書いた内容。
なので、入門書というには少々つらいか。全然知らないわたしとしては、
「その辺もう少し詳しくお願いします……」と思った部分は多々あった。
もう少しページ数、増やしてくれても良かったけどね。
しかしけっこう書きぶりがユーモラスで笑えた。
実際のところは暴君でタマラン父親であったろうフリードリヒ・ヴィルヘルム王の描写も、
つい笑ってしまう。笑ってしまったところを引用したかったんだけど、十行くらいあるのでやめた。
お父さんも、けっこうスゴイ人だったんだろうなあ。
何しろ官吏が1時間遅刻したのに300万円の罰金だそうですよ!
この本によれば、色々合理的に改革もしたそうだし、質実剛健で、息子の代へなかなかの
お金も残したようだし、まあ軍人王として戦備超拡大の方向へ行ったのは現代から見れば危ういが、
当時は状況も違いますしね。ある意味名君なのではないだろうか。
しかし子供たち、というか人間に対する態度はひどかったらしいね。
特に文化・芸術方面への理解と共感は皆無。息子の方は、特に若い頃は音楽も好きだったし、
後に著作もものしたくらいだから文芸への志向も十分あったようだが、
体罰を含む父親の厳しい禁止をくらい、ほとんど自分の好きなことはできなかったようだ。
何かっつっちゃ杖をふるって打ち据えたというんだから怖すぎる。
まあ確実にDV親父ですね。よくぞ後半生、まともに生きた……
でも大王も、家庭生活という意味ではやはりあまりうまくはいかなかったらしい。
妻とはほとんど疎遠。子供はおらず、甥姪との関係もどちらかというと恐怖され、
……親からされたことを繰り返してますね。DVに走っていたとは書いてなかったが、
親族にとって親しみのある人柄ではなかった様子だ。
この人の著作は他にも読みたいと思ったなあ。
しかし課題図書のリストの長さから考えて、実際に読み始めるのは多分10年後だろう。
……なんですかね、この遥かな道のりは。残り寿命も考えて、毒にも薬にもならない著書は
早めに切るように努力しなければ。
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