正月時代劇。
三谷幸喜!久々に文句のつけどころのない面白さだったよ!
やっぱりこの人はでかい話じゃなくて、小さい話がいいんだな。
今回は弛まず詰め込まず、尺ぴったりの話。過不足なく描き切っていて、大変満足。
原作マンガが好きなんです。
みなもと太郎「風雲児たち」。絵はいかにもギャグマンガで(内容もかなりギャグで)
読む前は全然食指が動かなかったんだけど、無理やりオススメされてしぶしぶ読んだら面白かった!
読み応えがあった!まあ20年も前の話ね。
それ以来、新刊が出た時に読んだり読まなかったりするだけで、実際はあまり覚えてない。
が、わたしの中でみなもと太郎への信頼は厚いね。
何しろよく調べてるんですよ!この人。
まったく余計なお世話だが、マンガの原稿料が相場より相当高いとしても、これだけ時間かけて調べてたら
とても金額的に引き合わないだろうと感じたくらいの調べ方。
調べ方だけではなく、本人が自分自身で考えた捉え方。いや、これは時間かかりますよ。
そもそも、連載の描き始めは幕末の話を依頼されたそうなんです。
しかし「幕末の話を描くためには関ヶ原から描く必要がある」ということで関ヶ原から話をスタート。
読む前は、何言ってんの?という気持ちでいたが、読んでみるとたしかに関ヶ原から続いた恨みがあるんだなあと納得した。
それにしても、肝心の幕末まで20巻あるっていうんだから……まあ描きも描いたり、ですよ。
これを読んで、名前しか知らなかった歴史上の人物に血が通った。
江川太郎左衛門の人生が切ない。渡邊崋山の人生も切ない。宝暦治水事件も悲惨。
間宮林蔵が意外に曲者。
ちがう、ドラマの話でしたね。
1時間半のドラマなだけに、今回はとにかく蘭学革命篇というよりは解体新書篇。
解体新書のあのおなじみの話。
話自体にみなもと太郎独特の部分はそんなにない気がした。まああんまり覚えてませんけれども。
しかし今回ドラマを見てから検索して、前野良沢と杉田玄白の和解は解体新書刊行直後で、
18年も経ってからの古希の祝いではなかったらしい。これは三谷幸喜の改変かな。
フルヘッヘンドのくだりが創作か勘違い、というのは知らなかったのでびっくりした。
あれはでも、手探りの翻訳の苦労を具体的に上手く伝えるいいエピソードですよね。
いいさじ加減で書いたねえ、三谷幸喜。
お笑いと軽みとシリアスが理想的な融合。人数がかなり出ているわりに全然うるさくない。
単に人物紹介だけで終わってしまったキャラクターもだいぶいるが、
それはそれで飾りとして楽しかった。これが全然なかったら寂しかったであろう。
愛之助を前野良沢に持ってきたのは良かった。頑固さにいらいらする、しかし共感できないこともない。
そういう人物に上手く持ってきた。やっぱり上手いのかな、この人。
大谷吉継も良かったし、「悦ちゃん」のナレーターも良かったし。
杉田玄白が新納慎也なる人。一方の主役に来る人だけど……誰?コレ?と思ったら、秀次役ですか。
秀次役と知ってもしばらくピンと来なかったが、ああ。あの人か。なるほど。
今回は60才の役までこなした。杉田玄白もけっこう難しい役だと思うが、
(事においては現実的で調子がいいのに、しっかりした信念があって、しかし汚れ役。裏表裏、という役柄。)
上手くやったねえ。彼も信念に従って行動しているのだ、ということを一瞬たりとも疑わせなかった。
脚本としては良沢と玄白に同じセリフを喋らせる試みが大変面白かった。
同じセリフで同じ立場、というパターンは多々あれども、それが正反対の立場というのはあまりない。
ここは技ありでしたね~。見事でした。
前野良沢の家族の存在感が良かった。そうでなかったら全く女性が出てこないドラマになっているでしょ。
前野良沢の書斎?はステンドグラスなんて使って、絶対あり得ないが、……最初に「史実なんて知らん」と
宣言しているので、ここに文句もつけにくい。物自体は好きだった。こんな小屋、わたしも欲しい。
衣装もいいデザインだったと思う。
みなもと太郎がチョイ役で出ていたそうですね。見てはいたけど気づかなかった。
遠藤憲一が版元というのは面白い使い方だった。
有働さんのナレーションも良かった。
中津藩主がちょっと出てくるところは泣かせる。だが冷静に考えると、
投資した金で前野良沢が有名になってくれれば藩から金を出した甲斐もあるというものだが、
良沢が意固地になっているので金の出し損。
……ということを欠片も感じさせない、爽やかな藩主でした。
これは続編を期待したい。というよりむしろ、最初「蘭学革命篇」だと知った時、
どうせだったら順番に関ヶ原からやればいいのに!と思った。
正月時代劇はあとしばらくは「風雲児たち」でいい。10年くらい。
三谷幸喜には今回くらいのスケール感でやって欲しい。
保科正之とかいいじゃないですか。やって欲しいですね。
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