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< おそろし 三島屋変調百物語 >(ドラマ。)

宮部みゆきは稀代のストーリーテラー。
とまでいうのはちょっと言い過ぎかとも思うが(褒め言葉を惜しむタイプですからね)、
少なくとも「ぼんくら」シリーズはわたしの大絶賛作品。あれの筆力はすごい。

そこからすると、ドラマは小説よりだいぶ完成度が落ちるのではないかと推察する。
あくまでも推察。だって小説読んでないもの。ホラーは怖くて読めません。
「ぼんくら」もけっこうコワイんだけどね、わたしにとっては。

ドラマの初出は3年前らしい。けっこう経ってる。
主役の女優さん、風情はとてもいいんだけど主に動き的にはもう少しがんばりましょうかな~と思ったが、
名前を確認したところ、はは~、これが波留ですか。初めて認識した。
その後朝ドラのヒロインをやるわけですね。
大変寂しげ、しかし凛としたところはなかなか良かった。着物の所作はきれいでしたね。

ただドラマのストーリーはわりと納得できなかった。脈絡なく繋げすぎというか。
ここがこうだから納得できないと整然と指摘は出来ないんだけど、うっすらと全体的に。

全5回で、1話2話であれだけ気を持たせたおちかの話を3話で他と同列に同趣向で語っちゃうのはどうなのか、とか
1話の21歳の頃の兄貴と同年齢の自分を同じ役者使っちゃうのはどうなの、
島帰りの兄貴と語り手の松田屋を豊原功補がやっちゃうのはどうなのとか、まあこの2人が似てないだけに余計にね。

各話けっこう入り組んだ話で登場人物が多かったので、5話を5日か6日で見たわりには最終話でほぼ全員が登場する時に
納得感がなかった。各話ともおっさんが複数人出てきて若旦那が出てきて、きれいなお姉さんが出てきて……
細部はもちろん違うけれども、大変おおざっぱなところでは、似たような顔ぶれになってしまった。

なにより話として無理を感じたのは、
おじさん鬼畜!兄弟同然の男に、目の前で許嫁を殺されるという地獄のような経験をして気を病んでいる女に、
似たような話をわざと聞かせようってんだから!
共感力が高ければ高いだけ、聞いた話にも心は反応する。精神のバランスを崩すことは容易に想像される。
こんなことをされたら、まず100%鬱病一直線、下手したら自殺だと思う。
おじさんに佐野史郎を持ってきてもなお、そういうことをさせる説得力がなかった。

2点目は、こんな暴力的な男が許嫁でいいのか、おちか!
殺される前の松太郎への罵倒ぶりとか、あの行動を見たら百年の恋も冷めるわ!
松太郎に十分同情がいくように書きたかっただろうし、良助の描き方は相当に難しかっただろうとは思うけれども、
ああまで人でなしに描いてはそもそもおちかが良助を心から好いていたことに納得が出来ない。

小説は、この辺、おそらくは宮部みゆきの筆力で乗り切れるところだと思うんだ。
しかしそれを映像でやろうとするのはハードルが高かったような。
“百聞は一見に如かず”という言葉があるように、本来情報の伝達量は映像>活字であろうが、
活字の方が説明において優れている部分も相当あり、今回のこの話は映像で過不足なく描くには少々複雑すぎたと思う。

宮崎美子の明るさと善人ぶりに涙した。こういう人にわたしもそばにいて欲しい。
明るさという意味では地味ながら4話の後妻のお吉もしみじみ見ていた。あの明るさが家庭内にあったら幸せだ。
だいぶ哀れな役柄だったけどね。

そして、けぇぇぇぇっ!4話の畜生道に堕ちたお姉さん、「増山超能力師事務所」のエッちゃんですか!!??
全然わからなかった!!どこかで見たことあるなと思い「踊るドクター」とか「勇者ヨシヒコ」とかあるの見て
ああ、なるほど、と思ったけど。
儚さが段違い。顔の輪郭も相当違いますね。
男性役者の肉体改造はたまに聞く話だが、だいぶ変えて来てますね。

若旦那的な役者の皆さんは……おしなべて色男設定はされているけれども、正直そこまでではない。
満島真之介以外の区別はつかなかった。
まあわたしの顔認識能力もかなり低い方だけれども、ここら辺にもう少し気を使って欲しかった。

続編はなくてもいい認定。

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ドラマのDVDは出てないようだ。

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