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< 関ヶ原 >(映画館で見た映画。)

3時間近い歴史もの。しかも関ヶ原で三成主役。ということはつまりハッピーエンドにはなり得ない。
かったるいであろう、と覚悟して行った。
でもまあまあ飽きずに見られた。予想よりも好印象。

重厚じゃないところがわたしにとっては良かった。
予想よりもはるかに展開がスピーディ。
……それはそれで、話が若干わかりにくくなる要因でもあるのだが、まあ関ヶ原なんて有名な話だしね。
細部はあまり気にしないことにする。

スピーディな話運びには台詞回しも含まれる。だいぶ早口でした。聞き取れないところがなんぼかあり。
この早口では、岡田准一の滑舌は正直いまいち。彼だけではなかったけど。

司馬遼太郎の小説をベースにしているそうだ。
ナレーションを多用し、それが司馬遼太郎の文章そのままの引用と感じる部分が多々あった。
映画としてナレーションは次善の手法だろうが、引用が成功し味が生まれていた。

まあ合戦シーンは、わたしには長かったな。3分の2くらいで何とかおさめて欲しかった。
敵味方がほとんどわからないというシーンが多いけれども、まあ昔の人も旗印以外で区別もつけづらかっただろうし、
むしろコンピューターゲームでしか合戦を知らない現代人に、
“敵味方が赤・青と色分けされていて常に一目瞭然てわけじゃないんだよ”と教えてくれる意味も(結果的に)あったかも。

岡田准一は予想される通りの演技ではあった。
この人、演技はなかなかだと思うが「官兵衛」「図書館戦争」「海賊」と、最近同じ種類の役柄ばっかり見ているので少々飽きた。
「花よりもなほ」の演技が好きだったな。あれは是枝監督の愛のオテガラか。
でもこの年代であの程度の重厚感が出せるのは重畳。個人的には重厚な演技が好きかっていうとそうでもないけれども。

今回の役所広司は曲者でしたね~。今まで、あんまり癖を感じさせる役者じゃないと思っていたのだが、
その気になればこってりした役もハマるんだ。面白かった。得な役だったね。
どこのシーンだったかな、独白のアップでの怪物的表情と言ったら。
「竹杖の時のことなど、思い出すだけで腸が煮えくり返るわ!」の時かなあ。
目がギラギラドロドロして、今にも妖怪に化けそうな感じだった。

あの体型はCG加工してる?西田敏行が体スタントしてる?
役作りであんなに太ったんだとしたら、体重のハードな増減に伴う健康が心配ですし、
ナチュラルに太ったんだとしたら、それこそ健康が心配です。腹が丸々。

滝藤賢一なる人。
うわ、若いんだねえ!てっきり年配のベテラン役者さんかと!呆けた頃の秀吉なんか上手かったさ~。
ゲスト出演してるドラマはちょこちょこ見ていたようだが、認識はしていなかった。
これから来る。

ちなみに末期のあの顔のこけ具合はどうやったんだろう?それこそCGでも使わないと
あんな命の危険がありそうなほどの減量って出来ないよね?

平岳大はもう演技派俳優として認知されているでしょう。今回は特にいい役でした。
「真田丸」で最初ちらっと武田勝頼役で出たね。今回のガッツリぶりと端正な勝頼役を比べると、
同じ武将とは言え色合いが全く違うねえ。時代劇合うなあ。
映画にもう少し出て欲しいかな。出た映画をわたしが見に行くかというと、お約束はできないが。

有村架純。正直あんまり顔の区別がついていない、若くてきれいな女優さんのうちの一人。
まあ若干役柄的には中途半端だったとはいえ、この役があったことで女性要素が出て見やすくなったのでアリガタイ。
おっさんばっかりの映画はイヤなんです。

演技どうこうとまでいう役柄ではなかったが、大きな目が美しく、目に優しい役でした。
撮影は飛んだり跳ねたり、野を這ったり格闘したり、なかなかハードだったと思う。いい意味で努力賞。
わたしは恋愛ものが好きではないので「ナラタージュ」は見ないが、あれは原作がとてもいい小説なので、
映画もいい映画になるといいね。

有起哉さんが出てて嬉しかった。「ちかえもん」の竹本義太夫以来贔屓。今回は別にふつーの役。
木村緑子さん。好きなんだが、やはりふつーの役。北政所は「真田丸」の鈴木京香が記憶に新しいところで、
あれはいい造型だった。今回は北政所ってちょい役なので単純に比較はできないが。
和田正人。インディゴメンバーは贔屓なので出てると嬉しい。ふつーの役。

つーか、壇蜜、必要?あんな色っぽい尼さんが一人で庵を結んでいたら……
しかもなんだ、あの足は。監督のシュミなの?

奇をてらわない、スタンダードな時代劇。というには少しスピーディなのか。もっと重厚な話が好きな人もいるだろう。
でもわたしは重厚なのはタルいのでこのくらいでいいです。
今後も大作はこのくらいのテンポでお願いしたい。

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映画から離れたところで、石田三成のこと。

石田三成は謎。実際はどんな人だったんだろう。
まあわたしのイメージは「真田丸」で山本耕史がやった三成がかなり近く、切れ者・官僚・人情に不敏・細かい。
山本耕史はだいぶ凛々しい三成を演ったが、わたしはもっと小心者で小狡い人間を想像する。
あんなに腹が座ってはいなかったと思うんだよね。少なくとも、表では堂々と見せようとしていたかもしれないが、
実際はもっとびくびくしていたと思う。びくびくと言うのが言い過ぎなら神経質。

出自的に言えば、自分が支配するという大局的な思考回路は全く持たない、持てない人だったんだと思う。
上位者の意をいかに体現するかには長けていても。
それこそ出自を言えば秀吉だって同じなんだが、そこは不世出の天才だから比較はできない。

天才を補佐する有能な官僚として生きて来た三成の秀吉死後の生き方は、
彼一人の身の上、ミクロな観点からいっても難しい。
何しろ幼少時から今まで、天才・秀吉仕様で生きて来たわけだ。大人になる前に仕官経験があるではなし、
上位者・命令者としては秀吉しか知らない。

そんな三成が仕える人を変えようとしても、何しろあの秀吉の後ですよ。
誰に仕えてもおそらくは不満がつのっただろう。

そして三成が仕えるべきは秀頼なわけだが、実際問題として、秀頼はまだ何もわからない童子で彼に指示は与えられない。
秀頼の意を多少なりとも体現するとしたら淀君。
しかし淀君には政治的思考は欠片もない。まあそれは責められるべきことでもない。
淀君と三成の間柄がどんなものだったのか知らないが(愛憎どちらもあり得る気がする)、
それは水も漏らさぬ同盟関係とは言えなかったと思う。
淀君ではダメだ、という判断は三成には出来ていただろう。仰ぐべき上位者が手近にはいない。

とすれば、秀吉後、誰を上位者に仰いで三成は活躍するべきだったか。
一番有能な家康は敵。理想は家康を(本人の意思如何に関わらず)秀頼の守護者として固めてしまうことだったが、
まああの狸相手にそんな芸当は誰も出来なかろう。秀吉でさえ一番冴えている時にわたりあってようやく抑えていたんだから。

血筋的にいえば小早川秀秋がもう少し年がいっていて、聡明で腹も座っていて……だったら、
秀秋を後見に据えて、有能な三成が手早く動くということで何とか秀頼成人までしのげたかもしれないが、無い物ねだりである。
小早川秀秋が保科正之だったらね。あるいは。

秀吉死後の豊臣政権は、もう少し何とかなったんじゃないかというレベルで崩壊が進む。
ほんとにもう少し何とかならなかったんだろうか。そこが謎なんです。
関ヶ原でも、三成は自分には人が付いて来ないという判断が出来ていただろうと思うのに、
それに対する手立てをもう少し何とか……
まあ有能な人も、いるべき時にいるべき場所にいてこそ有能なのであって、そのタイミングですよね。
秀吉の死と共にその輝きは終わった。

更に謎なのは北政所。

彼女の真意はどこにあったのか。
秀吉死後、最終的には秀頼を後継者として豊臣政権を続けたかったのか。しかしそうは動いてない。
豊臣政権崩壊、徳川天下取りは必至とみて、その傘下での豊臣家存続を願ったか。
淀君―秀頼は全くの他者として無関係、あるは憎悪の対象だったのか。

北政所の動き如何で情況が大きく変わる可能性はいくつかの時点であった。
しかし彼女は最後まで、豊臣側に立つことなく中立を保つ。
映画の中では、淀君、佐吉への県民性(県はまだナイが)に基づく嫌悪を表明していたね。

聡明に描かれることが多い北政所だが、その行動原理は、
嫉妬や嫌悪だったのだろうか、
大局を見きった上での中立だったのだろうか。
それとも単に動くのがめんどくさかった・その任ではないと思っていたのだろうか。

この辺をがっつり誰か書いてくれないかな。出来るだけ史実を調べてね。

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