ルオー。実はけっこう期待していた。
ものすごくたくさん見かけるわけではないけれども、ふとしたところでたまに出会う画家。
野獣派に分類される、そのガシガシした筆致にも関わらず優しみが漂う画家。
たしか山形美術館で佳い絵を見たことがある。
しかし今まで見たのはだいたい小品だったので、今回のエキシビでルオーのアウトラインがつかめるのではないかと思っていた。
ルオーって、何が代表作でしょうね?
今回の展示品も、大きさ的にはあまり大きなものはなかったんだよね。
大きいから代表作というわけではないが、もう少し大きなものもあるかと思っていた。
予想よりも宗教画も少なかった。イメージでは「聖顔」のテーマが多い気がするのだが、これっていう聖顔はなく。
わたし側の集中力はまあまあ。何より今回は、行ったのが始まってすぐだったせいか、それともやはりルオーは
マイナーということなのか、特別展中の土曜日にしては驚くくらい人が少なかった。
そのせいでいつもと比べて静か。落ち着いて見られた。
全体的に、満足して帰ってきたんですけどね。
ただ今考えて、印象に残っている一枚があるかというと……そんなに決定的なのはない。
比較的残っているのは次の3枚。
「裁判官」
この前後に裁判官のモチーフは数枚あって、この絵の他はみんな風刺的で不気味で、
裁判官たちに対する共感は感じないのだが、一人の裁判官の顔をアップで描いたこの一枚だけは温かい。
誠実さがにじみ出ている。むしろこんなに良く描かれる所以を知りたいくらい。
これがキリストだと言われても違和感がないかも。
「リュドミラ」
貴婦人の肖像。サーモンピンクの色がきれい。
目の位置が左右段違いだが、それが気にならない美しさ。
「道化師」
道化師を描いたこの人の作品は数々ある。もっと個別化が出来る名前が必要じゃないかね。
これは白の道化師。伏し目がちで超長い顔。でも美人。……と、最初は女性に見えていたのだが、
どう考えても同じモデルという絵が他に2枚あり、そちらを見ると男性っぽい。
ちなみに他の2枚は「流れる星のサーカス」という連作の中の一枚「黒いピエロ」と、「アルルカン」
「アルルカン」はテクスチャーが他の絵よりもさらに厚い。少し色がうるさくて、「道化師」の優しさとはだいぶ違う。
この3枚は好きだった。
ルオーは青とピンクがきれいだね。「マドレーヌ」で使っているオレンジ・黄色もきれいだが少々賑やかすぎる。
青とピンクは有難みのある色だった。見ていて幸せ。これを宗教画に使うのはぴったりだね。
この人は“顔”なんだろうな。風景画でもいくつかいいのがあったけど、圧倒的に顔が良い。
だからこそ「聖顔」は得意な題材だろうし。
今回の作品は相当な数がパナソニック汐留ミュージアムから来ていたようだ。
ルオーの美術館なんですね。今まで存在を知らなかったが、いつか行ってみてもいい。
しかしカンディンスキーその他の絵が何度も出てくるのは若干微妙だった。
比較のための引用ということで置いたんだろうが、少々興趣を削いだと思う。
ほら、カンディンスキーとはこういうところが似てますよね、とか言いたかったらしいけれども、
それがわりと数多く引用されることで、わたしは水増し感を抱いてしまった。
例えていうなら、映画の流れを途中で切って関連するフィルムを間に挟むような唐突感。
関連のある画家というなら、それはそれで1つのコーナーを作って、そこで解説をして欲しかった。
まあカンディンスキーは宮城県美術館の看板なので、出したいんだろうけど。
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今回の常設展には川端龍子「和暖」が復活していた。
……が、前回は感動したのに、今回見たらぴんとこなかった。いやー、こんなんだったか?と思った。
前回すごくじっくり見たのに、山吹しか覚えてなかったし、山吹には鳥、萩にはうずらが描いてあるのにも気づかなかった。
やっぱり出会うタイミングって大事ですねえ。
まあ今後も所蔵作品はとっかえひっかえ見せて欲しいです。
そして現代アート(いわゆる前衛)の作品は別に見たくないので買わなくていいです。
どうせ現代物買うんだったら、きれいな日本画とかにして欲しい。
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