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◇ 高橋克彦「ドールズ 全5巻」

まあわたしもけっこう時間をかけて5巻読んだから最初の方は忘れてるけれども……

たしか1巻2巻は普通に読めたんだよな。
3巻は急激にグロくなって読んでてツラかった。
4巻5巻は突然「竜の柩」風の大型伝奇小説系になって。
でも結局グダグダで終わりました。

この人の話は、とにかくマッチポンプ式というか、自問自答式というか、キャラクターAが問題提起→Bが回答という
流れでずっと進むでしょ。
「竜の柩」くらい内容があった上でならそれでも面白かったんだけど、この話のようにそんなに書く内容がないのに、
延々と「(解決策として)これはどうか」「いや、それではこれこれこうだから無理だ」
あるいは「これこれこうだ」「そうか!これこれなになにということか!」
こういうのずっとやってると、……ダレます。読んでて。

台詞に個性がないのもイヤなんだよなあ、この人の話。
語尾とかで書き分けようとしているとはいえ、結局やりたいことは自問自答なので、
その時いる人で適当に台詞を分け合っているだけに過ぎない。
だからどの台詞を誰が言っても同じ内容になってしまう。

タイムパラドックスについての冗漫なやりとりが何か所も出てきて退屈だった。
別にいいんだけども。タイムパラドックスについての言い訳なんかしなくても。
しなかったらしなかったで、わたしは「ちゃんと説明しなきゃだめじゃないか!」とか言いそうではあるが、
600ページの小説の4分の1くらい、それに費やしてると話自体は進まないわけですよ。

最強の敵として設定した箱神を倒すのも、590ページですからね。
残り10ページで倒す。無理がある。
しかも倒したって言える展開かどうか……単に戦って倒すという方法は月並みなので避けたのかもしれないけど、
それにしたって盛り上がりに欠ける収束。
そもそも5巻では箱神出てこないしね。敵キャラが出てこないで終わる話ってどうなの。

そして3巻までは主要登場人物だったはずの主人公の婚約者の香雪さんは4巻5巻で、存在しなかったような扱いですしね。
4巻になって新しい女性キャラが突然主要人物となり、5巻はさらに突然別の陰陽師親子が出てきて、
……要は1巻から3巻までと、4巻5巻は別の話なんです。
別の話をくっつけちゃったのが悪いわけで。5巻なんて主役だったはずの人が全然活躍しないもんね。
その他大勢になっている。

「竜の柩」は名作だったと思うのだが……
1~3巻は普通に一話完結の話としてまあまあ面白かったのに、変に話を大きくしようとするから。
まあでも決着はつけないとダメか。でないと目吉さんがなぜここに来たかという答えが出せない。
そこに縛られて無理に話を大きくしてしまった感じかな。もう少し練るべきだったと思う。
しかしシリーズを収束させようとした律義さは書き手として誠実か。

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