丸谷才一といえば「源氏物語」と「ユリシーズ」の人。
ってか、日本古典と英文学かい!二刀流ですな。
大野晋との源氏関連の対談集は持っていて、はるか昔に一度だけ読んだが、内容が高尚すぎて楽しめず。
数年前「ユリシーズ」を読んで、翻訳家としての技に感嘆した。
今回のこれは、一応小説らしいですね。……まあわたしは小説としては読まなかったけど。
単に、丸谷才一のアイディアを発表するための(他にどうしようもなかったがゆえの)手段として読んだ。
小説部分は特にこれといっては……。
ヒロインと父との関係、男との関係、学会内でのごたごた、読んでいて不快ではないし淡々と読み進めたけど、
そんなに深いことが書いてあっただろうか。どこだかで、ヒロインと男との関係を源氏物語の中の男女関係に
比していた人もいた気がしたけれども、そこまで読まなきゃならないかなあ。疑問。
しかしアイディア部分は面白かった。
芭蕉が義経の没後400年に触発されてみちのくを旅したとか、
源氏物語の幻の「かかやく日の宮」の巻はやはりあったのだろうとか、
語弊はあるかもしれないけど、はるか昔の梅原猛なら縷々書き連ねて1冊書いちゃうような
文学史的なアイディアをいくつか書いている。
これを書きたくて(しかし1つのアイディアで1冊の分量の考証・解説をするのが面倒で)
小説仕立てにしたんだろうなーと思っている。少し不純な気もするが……
でも新しい説を立てる、それを読む、というのは愉しいもの。
章ごとに色々書き方を変えてくるのも技あり。
「ユリシーズ」からの影響かもね。(というには作品間の時代が空きすぎてるが)
器用な人だったんだろうなあと思う。
丸谷才一といえば旧仮名遣いですが。
今回は日本文学の話だからして違和感はなかった。他の小説ではどうだろうか。
というわけで他の小説も今後読んでみたいと思います。
![]() 輝く日の宮 [ 丸谷才一 ]
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昔から不思議なのだが、失われた巻名が「かかやく日の宮」ってのはどうだろうねえ?
桐壺や帚木とかも紫式部本人がつけたものではないと言われている気がするんだけど、
「かかやく日の宮」だけ二文字じゃないところはなんで……
かかやく日の宮があるのなら光る君という巻名もなきゃだめなんじゃないかとも思うしさ。
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