PR

◇ サイモン・シン「ビッグバン宇宙論 上下」

この人の前の本「暗号解読」はほんとに偉いと思った。
何しろものが暗号ですよ?その歴史を、一般人にわかるように説明するなんて……
暗号の世界なんて、古代はまだしも近現代になったら、言語でもなく物理トリックでもなく数学の話だもんね。
その数学の話を(けっこう深くまで)言語で語ろうとするこの努力。それも一般人にも面白く。

そういう高いハードルを乗り越えた筆者にとって、この本はお茶の子さいさい……とまではいかなくとも
まあ楽な方だったと思う。
物理式もほとんど出てこない。「暗号解読」では、さすがにめんどくさくて飛ばした箇所も若干あるが、
今回のこれは何しろ文章ですから、普通に読めた。
例によって宇宙論の概説をやってくれているので、これ一冊で(上下2冊で)、人間の宇宙についての考え方の
歴史を理解することが出来る。非常にお得な本。

ビッグバン理論ってごく当然のものだと思っていたけど、わりと最近の考え方なんですねえ。
その前の主流は「非常に静的な、永遠の宇宙」で、過去も現在も未来も永遠不変の宇宙。
人間が生まれて死んでいき、星や惑星が衝突して消えてはくっつく宇宙のなかで、
なんで永遠があると考え得るのかは今となってはよくわからない。
だが天動説だって当時の人にとってはごく当然の話で……何しろ自分が動いているって言われてもさ。
現に動いてないやん?ってのは人間の体感からしたら絶対的な真実だ。その絶対的な真実に反する地動説は
受け入れられなくても仕方ない。

ビッグバンだって、100年後には「なんでそういう理論があり得たのか、今となってはよくわからない」と
言われる可能もある。科学は更新する。その面白さを十分に伝えてくれる本。
概説だけに終始しておらず、個々の科学者のエピソードもふんだんに盛り込まれているのでかなりニヤニヤ笑える。
やっぱり人物について書くと血肉が通いますよ。

多少長いけど、久々に宇宙についての本を読んでみようかなと思ったらオススメ。
精通している事柄じゃなければ、各論じゃなくて総論の方が面白いしね。

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

ビッグバン宇宙論(上) [ サイモン・シン ]
価格:1728円(税込、送料無料) (2017/2/26時点)

ここ2年以内の「コズミック・フロント」で、「宇宙は無から始まった」という説を紹介していて
新しさを感じたものだが、2006年上梓のこの本にすでにそのことが書かれていて驚いた。
無から有は作れないというのが一般常識だが、無から始まるというんですからねえ。

よくわかってないのでうまく説明できないが、イメージとしては太陽系のスペースに平均原子1個とかのところに
2個あったとして、それがゆらぎとなり動きが始まる、というような。
原子がある時点で無じゃないじゃん!だが、これはわたしの記憶で、原子って話じゃなかったかもしれない。
なんかとにかく。意味なく始まる。それってありなのか、と思ったが番組を見てたら説得された。
「コズミック・フロント」は面白くない回は面白くないが、面白い回はなかなか面白い。

コメント