こってりと。相変わらずこってりと。
冒頭始まってしばらくすると、第一変奏~第六変奏(←たしか)まで枝分かれした別な話になるので、
森見登美彦なんかが好きでよくやるパラレルワールドの手法だなあ、と思っていた。
そしたら恩田陸はさすがに並みじゃない腕力のある作家。その変奏を、
……そうですか。そうまとめますか。平行世界に必然性を与える。
何種類もの平行世界を書く小説で、それを書くことに必然性を感じる話って多分読んだことなかったんだよ。
なので、わたしは作者の書きたいキモチだけのことなんだろうなあと思っていた。
もっと言えば、どれを書くのが一番ベストなのか、決めかねただけなんじゃない?とも疑っていた。
読みが浅いのかもしれないが。
この作品は、まとめの章で「あ~、なるほどね~」と納得する。
少なくとも理由づけは出来ている。人間関係はさくさくと記号のように書かれてる部分もあるので。
ここもこってり書いたらもっと面白くなったかな?厚い小説をさらに3割くらい厚くしてしまうかもしれないが。
そして相変わらず、途中で突然コワイんだ。ぞくっとする。
わたしはコワイの苦手なので、あんまり脅かさないでほしい。
今回も中盤で……うわ、そう来るの?という設定が飛び出して来てぞっとした。
恩田陸のキャラクターとしては定型な人たち。しかしこれはこれで魅力的。
婆三姉妹の絵柄なんかは、しっかり浮かんで来る気がするね。癖のつよ~い大物女優を三人並べて
映像を見たい気がする。でも平行世界の話は、映像で見せると相当混乱するかな。
誠実に撮るんなら、引用の「去年、マリエンバートで」も入れなきゃいけないんだし。
それやってたらワケワカラン映画になるわ。
そう、映画の「去年、マリエンバートで」が文章で引用されているらしいんだけど、
正直、全然その存在を覚えてないほど無視してました。あれは読むのがめんどくさい。
読むべきなんだろうけどめんどくさい。読んでない。
でも抜かして読んでも全く問題なし。抜かされては作者は嫌だろうが。
そういえば「木曜組曲」の映画見てないなあ。見てみたい。
![]() 夏の名残りの薔薇 [ 恩田陸 ]
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