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< シネマ歌舞伎 阿弖流為 >

いや、まあ、3時間5分というのは長かったは長かったね……。
寝不足だったこともあり途中で寝たもの。まあ実際の舞台を見に行っても真ん中あたりはだいたい寝てるんだが。

歌舞伎はわりと興味があって、歌舞伎座に3回くらい、地方公演に2回くらいは行っている。
テレビではたまにしか見ない。やっぱりテレビでの鑑賞は面白みという点では半分くらいになっていると思うんですよ。
ちょっと退屈で見てられない。

そういう意味では今回のシネマ歌舞伎もどうなんだろうなあ、と思いながら見に行った。
何年も前から新しい試みとしてやっているのは知ってたが、映画でか……。
テレビとそんなに変わんないんじゃないのかなあ。
しかも映画と比べて料金も高いしね。2100円。前売り買っても1800円。曜日割引などはなし。

でも今回は、作品が阿弖流為だというから。
わたしは奥州藤原氏好きの平泉好き。阿弖流為あたりまでも範疇に入ります。
10年以上前に見た米沢牛(←役者名)の「アテルイの首」という一人芝居は良かったなあ。
今まで見た舞台のベスト1かもしれない。泣けて泣けて、市民会館だか県民会館だかのホールで号泣した記憶がある。
もう一回見たいな。2013年に全国公演をやったという情報がネットでさくっと出てくるから廃業もしてないだろうが、
……その他の情報がネットで拾えないとなると、だいぶハードルがなあ。米沢牛はHPとか持ってないのか。

それはともかく今回の「シネマ歌舞伎 阿弖流為」。

話はね。そもそも歌舞伎の話って荒唐無稽で、時代はばらんばらんだし、設定はトンデモだし、そこに目くじらを立てると
端っから見られない。歌舞伎は豪華絢爛たる衣装と大道具、役者を見に行くところです。

今回の役者は染五郎=阿弖流為、勘九郎=坂上田村麻呂、七之助=ヒロイン立烏帽子&鈴鹿の二役。

わたしは近年、勘九郎が贔屓。……って、全く舞台は見たことないんだけどね。
役者として唯一見たのは、多分「清州会議」の織田信忠で、ほんのワンシーン。
なので贔屓になる要因はないっつっちゃないのだが。前田愛と結婚してしばらくして、
わたしは久々に見たこの人の顔に感動したんだよね。
「ああ、いい顔になったなあ」と。
幸福な結婚をしたに違いない。……まあ結婚式の時の本人の号泣は感動というよりはむしろ退いたくらいだが。
その後仕事でも充実しているらしく、さらにいい顔になっていった。
信忠なんて、本当にその顔、そのワンシーンだけなんだけど心に残る。

20歳の頃の顔の売れ始めはむしろ弟の七之助の方がテレビ受けは良かった。人気もあったと思う。
勘九郎は華やかな弟を一歩引いて見守る実直なお兄ちゃん。脇でいくのかなあという地味な感じ。

そしたらまあ、育ちましたねえ。いい役者になった。

お父さんそっくりでね。お父さんそんなに好きではなかったけどね。お父さんは世話物はいいと思ったけど、
時代物はやはり少し重みに欠けるうらみがあったように思う。なんて、歌舞伎を生で5回しか見てない人の言うこっちゃないけど。
わたしは仁左衛門の端正さを愛する。

今回の勘九郎は3人の中で一番歌舞伎役者として上手に見えた。
見得とかね。いかにもな歌舞伎の表情。おお、おお、と思った。伝法な口吻がお父さんそっくり。
しかしお父さんよりわずかに端正で、力強さもあるんじゃないかね。抜くところは抜く、力をこめるところはこめる。
これはいいんじゃないかなあ。

大活躍という意味では七之助が見事だった。
女形の二役。七之助の初見はやっぱりちょっと線が男っぽく、女にしては太くてオバサン的なんだけど、
だんだん見慣れてくると嫋々たる乙女に見える。というより、鈴鹿と立烏帽子の二役で、鈴鹿になった時のしおらしさといったら。
鈴鹿と立烏帽子の関係性は話の上でもかなり錯綜していて難しそうなのに、
これは鈴鹿だ、という微妙な演技にびっくりした。
役者としての技量はかなりのものなのではないか。器用、というのはあまり褒め言葉に響かないかもしれないが、技量のある。
体の動きも一番きれいだったよなあ。つまりは踊りもきれい。殺陣もきれい。

染五郎は、実はわたしはあんまり、な人でね……。
顔はきれいだし、華やかだし、世話物の色悪なんてのははまるだろうけれども。
歌舞伎役者としては、良くも悪くも崩れている、スタンダードじゃないところがあるような気がする。
現代劇やドラマにたくさん出ている部分が少々裏目かも。
阿弖流為。わたしとして阿弖流為に思い入れある分、もう一つ上の人物造形を期待していた。阿弖流為は普通の人でした。
悪くはないけどね。勘九郎、七之助に伍していけるとは思うけど、兄弟の方を褒めたい。
兄弟は、いいもんを見せてもらった、と思った。

御霊御前。市村萬次郎なる人。
この役も良かったですよ~~~~~~。役としては全体で一番良かったかもな。
ほんとにコワいおばあさん。いやこの人は女の人ですよね?と見ながら思っていたほど老女そのもの。
しかも威厳のある、魔力もある。いやー、ほんとに。と言いたくなる。

藤原稀継。坂東彌十郎なる人。
良かったねえ。いかにもな温容にも見えるし、それが化けるとちゃんとラスボスに見える。
この二人のベテランが話を活かした。

蛮甲。片岡亀蔵なる人。
この人は歌舞伎感があまりなくて、実は普通の役者なのではないかと思った。ユーモラスで良かったですよ。
悪役といえば悪役だが、お笑いを一手に担当。熊子さんの役者もお疲れ様です。

役としてはそんなに大きくないんだけど、阿毛斗という役の坂東新悟が佇まいが妙にはまっていた。

役者たち、良かったです。

あと映像作品としても、期待以上だったな。

わたしは劇場中継を想像していた。あれは舞台正面を基本に、多少のクローズアップとか使うっけか。
そんな程度の地味さを想像していたところ、顔のクローズアップは多用するし、カメラはいろんな角度から撮るし、
映像効果も相当に使い、こってり極彩色の迫力。
見始めは、あまり顔のアップを寄られると舞台化粧が辛かったが、見慣れてからはただ迫力だけを感じていられた。

衣装もすごいね。イマジネイティブだね。金もかかっとぉる。衣装担当もエライ。

殺陣もきれいだったさねー。ありゃー体力が大変だろう。あ、でも映像としてはコマ送りっぽくしていて、加工してますよね。
加工もお手柄なんだろう。

見てて疲れた。疲れたが、1800円払っただけのことは十分ある舞台だった。
なので、今後はシネマ歌舞伎、面白そうなものは行こうと思う。
もうこの先来年3月までのスケジュールは決まっているようで、その中で気になるのは、
 
「スーパー歌舞伎Ⅱ ワンピース」←これは実際の舞台をやると聞いた時も気になった。もうチケット完売だったから
行けなかったけど。今回シネマ歌舞伎でやると聞いて大変嬉しい。行く気満々。
「三人吉三」←勘九郎、七之助、松也らしい。コクーン歌舞伎がどんなもんか。
「女殺油地獄」←仁左衛門さん。新作ではない伝統的な作品をシネマ歌舞伎がどう見せるか。

ここらへんは多分見に行く。1週間、長くても2週間の上映が基本のようだから、ちゃんと休みを案配しないと。

しかしさすがに歌舞伎、年配の観客が多かった~。さすがに歌舞伎なんだなあと思った。

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