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◇ 万城目学「かのこちゃんとマドレーヌ夫人」

万城目学もこういうの書くんだ。と思って意外。
いつもの万城目ワールドだと、コッテリミッチリ、ページ数も多いですからね。
変だし。まあ今作も変と言えば変だけど。

でもその変さもふんわりしたメルヘンの範疇におさまっているので居心地がいい。
居心地がいいが、万城目学の全力はこちらの方向にはないと思うので、
こういう作品はたまの箸休め程度でお願いしたい。
「アンタから変を取ったら何が残るか!?」(←一応激励)という万城目学なだけに、
こういう万人向けに終始するのは勿体ない。裾野が広がって、営業ツールとしてはいいだろうけど。

……ってなことを言いつつ、最終章は泣きました。
玄三郎さん!!切ないなあ。ご老人だろうけど、いい旦那さんですね。喋り方が好き。
マドレーヌ夫人のために最後の力を振り絞って吠える、というのも好きだなあ。
思い出すだけで涙が出てしまう。
実は読んだのは地下鉄の中で、ボロボロ泣きました。昨今はみんな手元のスマホを見ているので、
本人が平然としていれば泣いててもほぼ気づかれない気がするんだけど、涙はいいとしても、……鼻水がね。
ちょっと誤魔化せないレベルだったと思われる。ちょっと危ない人っぽかったかも。まあいいけど。

かのこちゃんとすずちゃんが変な子。でもわかるわかる、といいたい変な子。
子供は大なり小なり変さを含有しているものです。大人になると外に出さなくなるけどね。
出さないだけで、大なり小なりみんな変なんだ。世の中みんな変だ!
変なところをもっと表に出そう!その方が変でみんな楽しい!!

“お茶会”……そもそも元ネタの「赤毛のアン」でも、アンとダイアナが、大人の本式のお茶会を心がけて、
ちょっと気取ってやるんだよね。それが失敗に繋がるのだが。
こっちでは「ござる」になってしまうのが笑えるところ。

かのこちゃんの環境と、すずちゃんの環境では、同じ「お茶会」という単語が、
根本的にこれほど違ってしまうんだよね。
こういう言葉の意味の違いって、大人になっても実はあって、ギャップがないように見えるだけに
もっと性質が悪いというか。すれ違いがないように見える、本人たちも気付かないところで、
人間同士はやはりすれ違っているんだからカナシイもんですね。

と、いう風にわかったことを言う必要はさらさらないメルヘンで、あっさり読んで吉。
マドレーヌ夫人は魅力的だし、パパとママも普通の人っぽいが魅力的ですよ。あんな大人はあまりいない。
そして玄三郎さんが!!(再び繰り返す)
お肉食べられて良かったなあ。マドレーヌ夫人と最後まで一緒にいられて良かったね。

……泣く。

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